平田一

灰羽連盟の平田一のレビュー・感想・評価

灰羽連盟(2002年製作のアニメ)
4.6
“ようこそ、不思議なハイバネたちの世界へ”

「serial experiments lain」「雨の降る場所」「リューシカ・リューシカ」などで知られるイラストレーター・漫画家の安倍吉俊さんが手掛けた同人誌を起点としたTVアニメーション。背中に飛べない灰色の羽をもつ「灰羽」たちの日常と世界の秘密、優しい話が描かれる。ノイタミナ発足以前のフジテレビの深夜枠で10月から12月にかけて放送された。

高い空からまっすぐに落ちていく女の子は、水に満たされた繭の中でやがて目を覚ました。迎えたのは背中に飛べない灰色の羽をもつ「灰羽」という人間たちで、落下の夢を見ていたことから、少女は「ラッカ」と名付けられる。

ここから始まる灰羽としての生き方や日常がラッカに与えていくものとは? 辿り着いた「やさしさ」とは――?

「serial experiments lain」で大ファンになってしまった安倍吉俊さん原作のアニメとなれば見るしかなくて、いざ見たら特殊なアニメで最初はビックリしましたね。まず一体どこに行くのかまるで予測がつかない話、今回聞くのが初めてだった大谷幸さんのサントラが、まるで柔和な夢のような作りでフワフワしっぱなしw 自分が身構え過ぎたせいか、最初の頃はだいぶ眠気が勝る時もありました。正直その時「あれ、ハズレ?」って思ったこともありました。

ところが仲間の灰羽に起こった異変をきっかけに、一気にアニメがどうなってくのか、グッと惹きつけられました。一転してサスペンスが画面に充満し始めて、ラッカたちがどうなってくのか、まるで予測ができなくて、もしやこれはlainと同様の鬱アニメ?と思ったら、話はさらに思わぬところに転がっていき、その果ては……あんなに優しい結末になるとは思わなかったです。

監督はところともかずさん。シリーズディレクターとして「まりあ†ほりっく あらいぶ」を、監督として「七つの大罪 聖戦の予兆」をこれまで手掛けたお方ですが、結構寡作なんですね(主に絵コンテや演出での活躍が中心に?)。この二作は残念ながら拝見はしてませんが、とても灰羽みたいなアニメを作る人とは思えずです(「七つの大罪」はマガジンの冒険アクションものですし)。色味を抑えたルック然り、ヨーロッパを思い出させる灰羽たちの住む場所と、とにかく派手さの欠片も皆無な穏やかな世界観。話も結構全体的に淡々としてるのに、どんどんこっちを惹き付けていく語りが非常に好きですね。加えて後半、レキにまつわるミステリーの行く末だとか、ピンと張った糸のようなサスペンスの醸し方、ラッカに託したものであったり、どれもこれもが面白く、80とか90年代名作アニメ級ですよ。

また先ほど申したように初めてだった大谷さんの曲もアニメのオープニングもエンディングも素晴らしく、月曜深夜にもってこい。lainの時もそうなんですがパイオニアLDC産の日本のアニメーションって、曲も含めて何かこっちの好みに当たりなんですよ! YouTubeでアニメCM、何か見ちゃうほどですしw

ちなみに今は大谷さんの「月の人魚」というサントラを聞きながら書いていますが、これも灰羽に使ってた?ってぐらいに曲が良いですね。いやあちょっと大谷幸さん、Spotifyに登録ですし、Apple Musicでもお気に入りに登録させてもらいます!

まとめるとガッツリ見られてとても良かったアニメです。少しずつDVDの方も買っていきたいし(パイオニアLDCレーベル表記のバージョンをね)、U-NEXT以外の配信サイトの方でも見たいなあ。

いつまでも残ってほしい、極上のアニメです。
平田一

平田一