リミナ

ぼっち・ざ・ろっく!のリミナのレビュー・感想・評価

ぼっち・ざ・ろっく!(2022年製作のアニメ)
4.5
※原作既読(後追い)

現実とフィクションの境界を越えて深く結び付いた新世紀のバンドアニメ。

女子高生×ロックバンド×まんがタイムきらら原作といえば、真っ先に『けいおん!』が頭に浮かぶが、原作からさらに差別化が図れた作り。

自分が思う主な本作のポイントは以下の通り。
ただ、漏れなく挙げようとするとあまりにキリがないので観た方が早いかもしれない。

【物語面】
・原作が4コマ漫画故の余白を詰めず、より膨らませた内容
・原作からあるセリフや描写も場面に応じて取捨選択と改良
・登場人物の成長を軸に、取り巻く周囲の反応も欠かせない(文化祭ライブの観客に両親やひとりのファンなどが追加)
・原作からさらに増えたパロディ描写

【映像面】
・作画のみならず、人物も映る実写映像やアナログ素材(ゾートロープ、風船、人形など)、3DCGまでフル活用した実験的映像
・アニメーターが動かしやすくデフォルメ表現もしやすい、線の数が少ないキャラクターデザイン
・キャラ造形の原型を留めないほどのデフォルメ表現
・画面内の何に焦点を当てているのか明確なレイアウトやカメラワークの数々
・狭いライブハウスを広く見せたり、ひとりの孤独を強調するために広角の構図を多用

【音楽・ライブ描写面】
・LOST IN TIME三井氏やKANA-BOON谷口氏、tricot中嶋氏、LiSAらに楽曲提供するカヨコ氏、ONE OK ROCKのサウンドプロデューサーakkin氏など第一線で活躍するクリエイター陣による楽曲
・実在する機材(ギブソンレスポールカスタムなど)やライブハウス(下北沢SHELTERと新宿LOFT)、楽器屋(イシバシ楽器)
・原作にはなかったアジカン要素(楽曲由来のサブタイトル、第3話に登場のザリガニら、『転がる岩、君に朝が降る』カバー)
・作画難易度の高い手元を省略しないライブ演奏描写
・ドラムのカウントやかき回し、演奏ミスなど本来の音源とは別に複数パターンの音源が存在
・ライブでのセッティングやエフェクターを踏む描写
・スピーカーから鳴る音で揺れるペットボトル、スモークで映える照明などによるライブシーンのリアリティ

そして、本作の凄い点は、こうした挙げたポイントが作品から乖離せずに溶け込んでいるところ。
原作の時点でデフォルメ表現やパロディ描写がある土台、実験的な映像を実現できる技量の制作スタッフにそれを受け入れられる体制と制作スケジュール、制作に協力した関係各所、etc.
奇跡的に生まれたのではないかと思わされる完成度の高さを誇る。
現代のバンドアニメにおけるひとつの到達点なのは間違いないだろう。

本作に対して満足なのだが敢えて言えば、せっかく初心者の喜多もいるため、+αの要素で機材やライブハウス、ライブについての基礎知識の解説描写があっても良かったなと(特に画面にも映るPAやエフェクターなどは)。
本編に入れるのが難しければ、アイキャッチや次回予告前のミニコーナーなどで。
なお、第2話のドリンク代やブッキングの話は原作由来。

お気に入り話数:1、3、5、8、12

邦楽ロックが好きな自分には本当にたまらないアニメだった。
原作者や制作スタッフに感謝してもしきれない。
一生この作品のことを忘れないだろう。
リミナ

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