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ぼっち・ざ・ろっく!のspitfireのレビュー・感想・評価

ぼっち・ざ・ろっく!(2022年製作のアニメ)
3.1
部屋で8時間は練習しろ、友達をなくすまで出掛けるな、酒は有名になってからだ――とはSlipknotの名ギタリスト、ミック・トムソンの金言。図らずもこれを実践していた後藤ひとりは、ひょんなことからバンドを結成、真のギターヒーローへの道を歩んでいきます。
ぼっちちゃんの七転八倒があんまり他人事っぽくなくて、ユーモアよりも居た堪れなさが勝ってしまいました。山月記じゃないんだから。この居た堪れなさを超えるカタルシスも作品からは受け取れなくて、こりゃ肌にあってないんだろうなぁ。

一方でバンドものとしてのディテールがしっかり作り込まれていて、そちらは見ていてとても楽しかったです。かつてオーディエンスとしてライブハウスに通いまくった頃を思い出します。これで大元ネタのアジカン履修してたら更に味わいが違うんだろうなぁ。
まず結束バンドの音楽性がマスロックに寄せてるのが良い。配信プレーヤーからの転身に説得力があります。中嶋イッキュウを起用しただけのことはあるかと。作画でも演奏でもリアルさの追求に余念がないのですが、びっくりしたのはアンサンブル事故。
Starryの元ネタのShelterも行ったことあるし(あの急な階段は実在する!)、Eoltの元ネタのLoftも行ってました。チケットノルマや財布事情に纏わる世知辛い話もいっぱい聞いた。うっかり行った現場に客が私含め二人しかいない、なんてこともマジでありました。リアルすぎてこんな過酷な現実を知らしめて本当に良かったのか、とさえ思います。

キャラクター造形では、廣井きくりが酔拳みたいなアル中メンターの令和版といった趣で非常に良かったです。ああいう感じの常に飲んでるプレーヤーも、実はライブハウスではちょいちょいお見かけしてました。そんなんだからバンドマンすぐ死ぬんだよ!とは思いますけども。長生きしてほしいですね。
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