平田一

月とライカと吸血姫の平田一のレビュー・感想・評価

月とライカと吸血姫(2021年製作のアニメ)
3.9
“宇宙を目指す全力な君が、未来をくれたから――”

冷戦期の宇宙開発競争をモデルにした、牧野圭祐さん原作のライトノベルをアニメ化。吸血貴族「ノスフェラトゥ」と宇宙飛行士候補生が世界初の宇宙飛行で月を目指す姿を描く。アニメーション制作は「ぼくたちは勉強ができない」などを手掛けたきたアニメーション制作会社・アルボアニメーションさん。

宇宙飛行士候補生の青年、レム・レプスはチーフ技術者からの命でとある任務を受けることに。人類初の宇宙飛行に向けて、無重力下での人体への影響を知るために、吸血鬼を実験動物として打ち上げる計画で、その訓練の付き添いをレムは求められたのだ。そこでレムが出会ったのはイリナ・ルミネスク。17歳の少女である吸血姫だったのだ。

ここからレムとイリナの二人の物語が動き出す――。

何かのきっかけでこのアニメに触れることになったんですが、結論から言ってしまうと、まずまずって感じです。

一応話の筋としてはかなり興味深い上(宇宙開発競争下ってこれまで触れてきてなくて)、レムとイリナの関係性も非常に尊い限りです。二人を支えるアーニャ・シモニャンもまったくもって可愛いです(木野日菜さんがこれまたピッタリハマっていたのがお見事です)w そしてレム役内山昂輝さんも非常に素敵です(内山さんのヒーロー役って何か斬新なんですよw)! 宇宙飛行士候補生で同期のミハイル、ローザたち、共和国の科学者であるスラヴァ・コローヴィンさんもイイ(土師さんが善人を演じていると深みがもう)! 監督責任者ヴィクトール中将も素敵だし、キャラクターが見れば見るほど魅力的なのばかりです(サガレヴィッチ副長官は当然除外としますがね)。

ただ、どうにも肝心の話の魅力が薄すぎる。内容自体は素晴らしいが、どうにも盛り上げ方っていうか、積み上げ方が淡々過ぎて、盛り下がりもたたあった。うまく言えないとこなんだけど、まるで指定されたレールを進むことだけ優先しちゃって、感情を注ぐ暇が得られなかったようだった。もしかしたらTVアニメじゃこの話を扱うのは役不足なのかなって思ったりもしてました(正直今も思ってます)。

かといって劇場アニメは尺の都合でカットだろうし(2部作なら話は変わるが、それでヒットできるかは……)、実は結構な難易度の原作なのかもしれません(原作は未読です)。それでも結構良いところも見られたのは嬉しいです。
平田一

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