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SPY×FAMILY 第1クールの都部のレビュー・感想・評価

SPY×FAMILY 第1クール(2022年製作のアニメ)
3.7
身分を偽り大義たる目的の為に家庭を営むという構図はMr.&Mrs. スミスのような愉快さを思わせるが、そこに狂言回しである子供アーニャを迎えて、より大衆向けの作品としてのルックを整えているのが計算高く巧みな構成であるように思う。

スパイの父、殺し屋の母、学徒の娘、と三本の軸を用意することで物語に幅を持たせているのも印象的で、それらの軸を重ねるとシットコム的なコメディ性を有するホームドラマになるというのも面白い。加えてアニメや漫画の手法としては画が不細工になりがちなモノローグ表現を、アーニャの目を通して語らせることでスマートに適切な場面で処理してるのがいいですね。話の流れに煩わしさがないし、スルスルと楽しめて、変にを後を引かない後味はミネラルウォーターを想起する。誰でも選り好みせずに飲めるという意味で、万人向けのあるべき形だと思います。

演出や劇伴などにも力が入っており、要所要所でアニメーションオリジナル要素を噛ませて話を映像向けに膨らませる手際も違和がなく、基本的には一話完結──とはいえ一貫した縦軸の流れは存在している──なので気負わずに楽しめるのがやはり大きいですかね。
それだけに作品としての強烈なケミストリーの不在が自分には取っ掛りのなさとしか感じられてしまい、一定の距離感を感じさせる優秀さは良くも悪くも目立っているかと。
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