都部

この素晴らしい世界に祝福を!の都部のレビュー・感想・評価

4.2
本作はメディアミックス化による改変箇所が作風も含めてかなり多い作品であるが、しかしその改変によって作品の空気感に飽きを感じさせない万人向けのアニメとしての再構築に成功しており、その喜劇的な異世界冒険譚という端的な見た目以上によく出来ている作品なのは言うまでもない。

まず本作はパーティー間の恋愛描写を原作から幾許か削っている点が顕著で、これによってパーティーという一種の擬似家族を思わせる距離関係の段階的な構築に物語が専念しているため、キャラクターに対する感情の没入が容易な物になっているというのが何より大きい。
そうした物語に準ずる形で、声優の技量を引き出すことで成立する愉快な会話劇を主な趣とし個人間の掛け合いの楽しさを作品の味にすることで、異世界を舞台にした一話完結のアットホームなコメディとして楽しめる土壌が構築されている──これは視聴者が作中の言動を通してキャラクターや物語の展開にどういった感慨を抱かせるかの巧みな操作に繋がっていて、作品の味を伝えたいように伝えるために綿密に再構成の形が取られているのは見れば見るほど感心する。

そういう部分を差し引きしてもしっかり面白いのだけれど、恐らく1期放送時点から2期放送が前提にあったとはいえ、10話というやや短めの構成の中でとにかくキャラクターを登場させてアットホーム感を補強する──内輪ネタの内輪の範囲を手抜かりなく拡張する手際の良さ──判断を取っているのも成程という感じで、出会いのエピソードを大胆カットしたウィズの登場など切るところはガンガン切ってアニメとしての収まりの良さを優先させているのも好感触だった。この手法も些かの危うさを伴うのだが、その回避策として作品の重要な土台であるカズマとアクアの初期から繋がりを序盤にしっかり尺を割いて描いているのとかも気が効いている。徐々に仲間が増えスポット的なエピソードが増えていく中で、この2人の関係性の構築が強固であるからブレなく最後まで物語を進行させることが出来ているように感じられる。
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