奪われた魔術書。フィロメラの自主退校の報せ。 二つの危機が降りかかる中、学院の封鎖により一時の安息を得たチセ。 だが、それは仮初めに過ぎない。 生徒たちは己を守る術を習得するため特別授業に臨む。 魔術に限らない”戦闘”の訓練に。
ロンドンの街に降り立つ二人の魔女。 行方知れずの魔術書を求め、夜の街を巡り歩く。 遠く響くは悲痛と憎悪を帯びた獣の声。 時同じくして臥せるフィロメラ。 知るはずのなかった優しさが彼女の心を締め付ける。
迫る試験に向け四苦八苦する生徒たち。 息抜きに始まった小さな余興でリアンはフィロメラに勝負を挑む。 ヴェロニカの一声で応じるフィロメラ。 接戦の末に勝利したリアンだったが、彼の目に喜びの色は露ほどもなかった。
ヴァイオレットの発案で始まった「肝試し」 二人組になって進む中、チセのペアとなったのはヴェロニカだった。 慣れない組み合わせだが、チセには確かに聞きたいことがあった。 フィロメラについて。彼女の家について。 ヴェロニカは微笑みながら、フィロメラの生い立ちを語りだす。
原因不明の悪夢。 魔力を抜かれ倒れてゆく者、閉鎖の理由を知り動揺する者。 混沌とした学院の中で、チセは禁書と接触する。 エリアスとの一時の休息も束の間、学院に不穏な気配が漂い始める。
少女の願いはただひとつ。愛されることだった。 愛を注がれなかった空虚な心が、少女を異形へと変化させる。 寄るべを求めた少女が、今は何を欲するのか。 それは少女にも分からなくなっていた。
変わり果てた友の姿。 チセが踏み出すには、それだけで十分な理由だった。 友として、魔法使いとして、彼女を救うためチセは走り出す。 今動かなければ、彼女は死んでしまうから。
これはいつかの記憶。 精霊が生まれた日。最も大事な命が下された日。 娘が愛されていたことを記憶し、伝える。 例えその先にどんな悲劇が待っていようと、その役目だけは果たすはずだった。
友のために奮闘するゾーイ。 その働きもあり、チセたちはついにフィロメラの元に辿り着く。 溢れ、暴走した魔力は彼女らを記憶の回廊へと取り込む。 惨憺とした過去を巡る歩みが、フィロメラの本音を引き出していく。
明かされたリズベスの過去。 愛とも憎しみとも取れる感情、その執着の果てに生まれた結末。 幽かな望みに縋ったフィロメラの祈りは、どこにも届かず闇に消えていくのか。 愛されたかった、認められたかった、それだけなのに自分には何もない。 そうだとしても。祈りを辞めなければ、差し出される手は掴むことはできない。
エリアスの助けで、リズベスの魔術を打ち破ったアルキュオネは本来の命令に従う。 そこにはフィロメラを守るため、アダムの残した仕掛けが施されていた。 しかし、リズベスは止まらず、自身すらも贄として異邦の神を顕現させてしまう。 すべてを塵と化す神に、チセたちは女神モリガンの助けを借りて立ち向かうのだった。
ついにリズベスと決別するフィロメラ。 学院で出会った大切な友と協力し、偽神の封印を試みる。 彼女は、自分がもう1人でないことを知っていた。 封印のため、助けを求めるその手には、すでに迷いなど無かった。
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