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スコット・ピルグリム テイクス・オフのmのレビュー・感想・評価

4.8
スコット・ピルグリムの物語を今語り直すならどうすべきか、という問いへのパーフェクトアンサー。
あのエドガー・ライト監督によるコミック実写化の傑作「スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団」がアニメ化!と思いきやこれ単なる原作コミックのアニメ化や同窓会ではなく、かなり一味違うアニメ化で最高だった。
このアニメが原作コミックとも映画とも違う道を突き進む事は第1話のラストで宣言される。そこから先は未知の領域。では何が描かれるのか?ズバリ「スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団」という物語&登場人物達の批評と解体と再構築であり、あの頃不足していた事を2023年の今改めて補っていく試み。今スコピルの物語を語り直すならどうすべきか?そう、物語の主人公に相応しいのは自堕落で無駄に強くてモテるスコットではなく、過去を切り捨てて生きてきたヒロインのラモーナだ。という訳で、この作品はラモーナの過去との優しい対峙、そして元カレ・カノ達のセルフケアを描いていく。これが凄く良い。マジで良い。本当に良い。

この作品が最も力を注いで描くのはラモーナという人間の成長だ。映画版ではどこか偶像化されてきたラモーナが、憧れのヒロインではなく一人の女性としてより主体的に描かれる。元カレ達とよりしっかりと優しく向き合い、自分の感情や人生と向き合っていく。それ故に彼女はこの作品で救われる。
ラモーナだけでなく、過去の物語では不憫な扱いを受けていたナイブスも、そして元カノであるロキシーも、より主体的に生きていて、この作品で救われている。元カレたちも全員救われている。ジュリーだって、もちろんスコットもね。優しく思慮深い作品だった。


オープニングでキャスト名がずらずら出てくるだけで笑える豪華キャスト(あの頃みんな無名だったけど、出世した人ばっかだものね・・)。みんなまた出てくれてありがとうね、と感謝したくなる。
そんな豪華キャスト達の声を楽しむ機会をフイにしてでも、日本語吹き替え版での鑑賞を推奨したくなるのはラモーナの吹替声優・ファイルーズあいの演技が素晴らしいから。
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