YasujiOshiba

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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ネトフリ。このところ3DCGばかり見ていてゲンナリしてたんだけど、そこになぎちゃんの熱いおすすめがあって、触発されて5話まで見た。

これはもう眼福。いやほんと。風景と、衣装と、海の煌きと、空に流れる雲と風と、夜の星々の瞬きと、戦火の業火... それだけで「大したおもてなし」を越えちゃってる。

これを作ったスタジオのことを思わなくても、きっちり涙が出てきそうになるし、思ったらもうたまらんでしょ。

でもね、ぼくには幸い、まだ半分以上話が残ってる。眼福はまだまだ続く。

2021/07/17
13話まで観了。6話あたりから、少し中弛みかなたとも思ったのだけど、なんのなんの。5話の最後に登場した、ギルベルトの兄ディートフリートがからみはじめてから、この物語の全体がよおく見えてきた。この不思議な自動手記人形の物語は、大いなるグリーフワークだったのか。

それにしても、グリーフワークが手紙というのは見事な着想だ。自動機械人形といいながら、人の気持ちを解釈せねばならず、解釈には共感がなければならず、共感には生きている実感がともなわなければならない。そして、生きている実感は、逆説的に、グリーフワークがぼくたちに突きつけてくるもの。

だから、「生きて、生きて、そして死ね」という命令に従うのではなく、ただ生きて、生きることが、そのままグリーフワークなのだ。他人のグリーフワークを手助けしてきたヴァイオレットが、「愛の意味を、少しはわかるようになったのです」という言葉でみずからのグリーフワークを一歩先に進めると、その先の扉を開けたところで、この物語のドアも閉じられたかにみえた。

思い出すのは、もちろんあの事件のこと。けれども、少佐への届かない手紙を書き上げたヴァイオレットが次の扉を開けるように、ぼくたちもグリーフワークのその先へ、グリーフワークを続けてゆく。実の所、グリーフ (grief )とは「(親しい人を亡くした)悲しみ・悲痛」のことだけど、その語源は「gravare」(重くする)であり「grave」(重い)なのだ。

この「重さ」はどこからやってくるのか。それは、亡くなった人との思い出でなければ、どこからくるのか。そして、その思い出の重さが、じつのところ、幸せだったことの重さでなければ、なんだというのだろう。

グリーフワークとはだから、幸せだった時を召喚し、その重さを確かめ、生きていたことの実感を、こから生きる力へと転換する作業でなくてなんだというのか。

いはやは、この歳になってアニメ見て泣くとは思わんかったわ、まじで。
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