このレビューはネタバレを含みます
世界観の読み解きや広げ方、登場人物の掘り下げ、クライマックスの展開まで見事だった。複雑な世界設定でありながらしっかりと表現し切る何一つ無駄のないストーリー。
登場人物それぞれがただのコマになることなく確かな背景を持った1人の人格として成立しており、それぞれが互いの思いを話したり、時には反発し合い、事件に挑む。そしてこの世界のシステムの末端(公安局)として生きている。そんな実感を持って示される人物像。
非道な手段や言い分を釈明する際に話者の顔が化け物のようなアングルで映し出されるのがものすごく良かった。戦闘シーンも細やかで鮮やか。主に主人公サイドの人の表情が本当にこちらまで苦悩し焦るほどに詳細に描かれており素晴らしい。
高度なシステムの近未来社会。そんな設定で描くのは正義と悪の間で揺れる刑事モノ。正義とは、悪とは。守るべき法とは、何に裏付けされて人を裁くのか。感情で人を殺す殺人犯となるのか、法のもと人を裁く刑事になるのか。
人の善悪を判断する犯罪係数を割り出すのは機械だが、執行するのは人の手。高度で完璧なシステムに人の手が介在する余地が残されているのもまた良い。
マキシマの言い分も分かる、というか、もはや最後には1番マキシマが人間らしく思えるくらいに、抱える理念は歪みはあるが説得力もあるもの。その最も人間らしくあるマキシマが、汗や血を流しながら小麦畑で地に這いつくばっている様子はすごく惹きつけられた。