レインウォッチャー

キャシアン・アンドーのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

キャシアン・アンドー(2022年製作のドラマ)
4.5
SWの超・名作スピンオフ、『ローグ・ワン』の前日譚にあたるドラマシリーズ。
スピンオフのスピンオフはもはや場外じゃあないのか…?という杞憂は吹っ飛び、今となってはわたしの中で総合『マンダロリアン』超えです。

フォースもライトセーバーも出てこないうえ初めの2〜3話くらいまではとにかく展開が遅く、ちょっと吹越満似の安藤さん…もといキャシアン・アンドーさんの半ニート的なうだつの上がらない姿を見せられる。
物語の方向性がいまいち見えず、このへんでリタイヤしてしまった勢も少なからずいるのではなかろうか。かく言うわたしもそうで、いったんそっと寝かして数ヶ月経ってしまった。しかし、どうか戻ってきてほしい。役者が揃ってくる6、7話頃からはもう引き返せなくなるはず。

今作は、その後の共和国側がまだピヨピヨ状態、要するに帝国に対するテロリストとして描かれている。宇宙各地に散らばった規模も意志もバラバラのテロ集団が、アンドーの関わった事件をトリガーにして徐々に徐々に形を成し、一本の大きな止められない流れとなっていく様を追うドラマなのだ。

タイトルこそ『キャシアン・アンドー』であるものの、全体としては時代の狭間に生きる人々の群像劇になっていて、ルーセン(S・ステラスガルド)率いるテロリストチームの他、帝国内の協力者、アンドーの家族や友人、囚人仲間、それに帝国側でその機運を察知する職員までが含まれる。

彼らに共通するのは、誰もが「それぞれの仕事」をまっとうしようとしていることだ。派手なアクションやスペクタクルシーンはごく少ないけれど、皆が常に静かな戦いを続けている。そこにはわたしたちが実感できるリアリティがある。
その視点はフラットで、単純な善悪では測れないものがあると思わせられる。最終的には帝国職員ですら応援したくなってきて、「なんかとにかくみんながんばぇ…!」という謎感情が生まれるのだ。

そんな彼らが、アンドーを軸にして話数を追うごとに引き寄せられるように集まり、最終話では始まりの場所に戻る。そこは同じ場所でありながら、決定的に戻れない変化を感じさせる。この構成の美しさ、ブラボー。おお、ブラボー…

この先にある「結果」はわかっている上での名もなき者たちの戦い、というスピリットは『ローグ・ワン』を確実に引き継いで広げたもの。後の歴史書には数行程度しか残らないような事件、コマとコマの間の物語に深く心打たれる。

来年に控えるときくシーズン2、『ローグ・ワン』を見返しつつ待ってる!