なっこ

星とレモンの部屋のなっこのレビュー・感想・評価

星とレモンの部屋(2021年製作のドラマ)
2.8
見ていた当事者は辛くなかっただろうか。とても息苦しさのあるドラマ。45分で良かったかもしれない、救いのあるラストだけどこれ以上見るのはキツいとも思えるし、これ以上付け足すものは何も無いようにも思える。

/この番組について/(NHKHPより)

近年社会的な問題となっているひきこもり家族の8050問題。老いた両親が亡くなった後に子どもがその死体と暮らしていた、という痛ましい事件をベースに、チャットで知り合ったひきこもりの男女に起きる、ある一日のドラマ。

(感想)
原田美枝子さんが演じる明るい母親が自分の母の性格に似ていて、母を突然喪うことの辛さに自分は耐えられるだろうかと違う角度で見てしまった。この母娘の関係性、何より母親の優しさがじんわりあたたかくてとても美しかった。でも、死んではじめて親と対話できるというこの事実はあまりにも辛いこと、この問題の孕んでいる家族の問題の根深さに暗澹たる気持ちにさせられた。

ひきこもること、それは当事者それぞれの事情があるはず。誰もが当たり前のように社会に出ているように思っているのかもしれない。けれど、何かで躓けば誰でも自分の心に引きこもって出てこれなくなる、そうゆう危うさのある社会だと思っている。誰でもたまたま今の自分を続けているだけで、何かひとつ違えば、そうなってもおかしくないんじゃないかと。それぐらい余裕がない。それは、私たち自身も世間や社会が怖いと思う人やなんだか気持ち悪いと思う人の感覚をどこか殺して生きているとも言える。見ないように考えないように追いやって。だから実は誰もが無関係でいられる話ではないと思う。

謝る親の向こう側に世間や周りの人間、ひいては社会が見える。彼らが謝って欲しいのは親だけじゃない、そういう親が出て行っている社会、適合して組み込まれている社会そのものなのだと思う。私にはそういうシーンに見えた。謝ってもらうことはゴールじゃない、でも謝ってもらうことで自分は間違ってなかったと思えて先に進むことができるのかもしれない。

ひきこもること
ひきこもることで何から自分を守っているのだろうか。どんな勇気があればそれを乗り越えられるのだろうか。どんな手であれば、その差し出してくれる手に応えることができるのだろうか。当事者以外の人にそう考えてもらいたい、そんな気持ちで描かれた作品だと受け止めた。
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