もりたま

大豆田とわ子と三人の元夫のもりたまのレビュー・感想・評価

大豆田とわ子と三人の元夫(2021年製作のドラマ)
5.0
溢れるあるある、冴えきった言葉選びのセンス、飽和状態の名言、止まらない展開、主題歌も挿入歌もやっちゃって、ごった返してましたね。坂元裕二ファンの私には得しかありませんでしたが、それにしても多すぎる。坂元節過多です。


まずは構成が時代に合っており、どんな観方をする人も楽しめるようになっています。ナレーションがあることで家事や作業をしながらでも理解しやすく、巧みな言葉のセンスで楽しませてくれます。伊藤沙莉もまたいい味出してるんですよね。

また、これまでの坂元作品は得体の知れない何かが根底にあり、それが最初から感じ取れましたが、今回はポップで、日常のふとした瞬間にそれが顔を覗かせるような、誰でもとっつきやすく、しっかり観る人にはより楽しめるという、誰に対しても親切な作品だったと思います。

それはストーリーにも現れていて、前半はいつも通り一人ひとりに焦点を当てて、中盤で大集合&急展開、後半で新しい関係性、終盤という坂元裕二というか連ドラのセオリー通りの全体の構成でしたが、全く新しいもののように感じました。特に葬式のシーンですよね。ここが結構大きいかも。

キャスティングも重厚でしたね。坂元裕二にはまだまだ一緒に作品を作りたい人も沢山いるんだろうなと思いました。お気に入りの松たか子をはじめ、映画花恋からオダギリジョーと岩松了や瀧内公美、はじめましてかな?岡田将生、市川実日子、そしてお久しぶりの松田龍平、風吹ジュン、石橋静香、高橋メアリージュンなど、演技派、オーラ派揃いで新しい人が出てくるたびに、やられたーと思いました。

そして、彼は書きたいことがまだまだあって、溢れて止まないのだろうなと思いました。これまでの作品ならワンシーン描いちゃうような、みんな下の名前で呼ばれてるのに自分だけ苗字で呼ばれるなどという話題を、言い合いのシーンで多用するものだから観ているこっちとしてはもったいないとすら思ってしまうあるあるラッシュでしたね。


そして、相変わらず松たか子はいい顔しますよね。坂元裕二のインタビュー記事を見てから松たか子の表情の演技力には感服です。今回もやってくれましたね。彼女の表情ってみた人みんな違う印象を持つと思うんですよ、それくらい何を考えているかわからない。観ている側に解釈を委ねてくる感じ、しかもそれを、観ている側が正解を知りたいと思っているところほど絶妙な顔をするんですよね。

それに対峙する3人の元夫もよかったですね。みんなハマってました。

松田龍平は相変わらずさすが。

岡田将生はいい具合に子どもでしたね。幼いというか、プライドばかり高いというか、でもそれに共感してしまうのも事実で、しかしそれを客観的に観ると呆れてしまう、という嫌なところを突いてくるキャラクターでした。それをアヒル口を駆使して見事に体現していました。

角田さんもやってくれましたね。こんなにメインで出てきちゃって。なんだかんだ私に近い部分もあるんですよね。ケチなところとか、変にロマンチストなところとか、なんかとってもイヤ!って観ていて恥ずかしくなるくらいでした。そういうところも含めて憎めない、というところも含めていいキャラでした。

市川実日子もよかったですね。もっと観ていたかった。それくらいシンパシーを感じたし、いいキャラクターでした。

オダギリジョーのシーンごとの雰囲気を変える力、オーラ、そして声、圧倒的でした。

豊嶋花も素晴らしかったです。出番は少ないながらもしっかり印象に残ってます。ベテラン揃いにも屈せず対等にやり合ってました。好きです。

他の皆さんも誰一人として違和感のある人はいなくて、好みとかは置いておいて、過去1番面白い作品だと思いました。


はな恋のときに友人が「ワンシーンワンシーン止めて語りたい」と言っていました。それをしたいくらい面白かった。

現代のテレビドラマのお手本と言ってもいいくらいいい作品でした。創作活動をする方には特に観ていただきたいですね。
もりたま

もりたま