ケーティー

サロガシーのケーティーのレビュー・感想・評価

サロガシー(2021年製作のドラマ)
4.3
タブーに切り込みつつ、いたずらに結論づけない、いい作品


ゲイカップルの代理母を務める女性が主人公の作品。この作品の面白さは、初めは、カミングアウトして親に殴られ弱者として描かれるゲイカップルがかわいそうで、逆に兄(ゲイカップルの片方)の代理母となり母への復讐を果たそうともとれる主人公のエゴが目立つのだが、次第にその立場が逆転していくということだ。

初めこそ、殴られかわいそうだったゲイカップルも、次第に自分たちは何の苦労もなく、赤ちゃんはまだかまだかと主人公の苦悩はそっちのけで楽しんでいる。(※)
一方で、初めは母の復讐心ばかりが目立った主人公は、次第に自らの代理母としての苦労や、なぜこんな選択をしてしまったのかを考え、親との関係(母親にどうしてほしかったのか等)を見つめ直し、悩み苦しむ。

そしてラストは、ゲイカップルが無神経な提案をするが、それを毅然と断る主人公がかっこいい。

ここまで書いてわかるように、本作はともすれば、ゲイへの批判ともとれない危ういテーマを扱っている。書き方が難しいが、代理母が自然の行為でないことは免れない事実だし、そこに向き合い描こうとしている本作は、いたずらにLGBTや代理母を批判しようとするのではなく、むしろ、LGBTとの共生を考えたときに免れない問題を私たちに提示し、それでも一緒に生きていこうと提案しようとしている。そんな風に感じた。

ここで本作がうまいのは、主人公が女性が女性として見られることの苦悩も描いていることだ。こうすることで、LGBTに限らず、誰もがジェンダーロールの問題を持つ可能性があり、LGBT=弱者というほど問題は単純でないことを明確化し、人間が普遍的に抱える偏見の問題に昇華させている。ここに本作の作者の鋭さとうまさがある。

全体として、役者のバランスや演出、脚本の生かし方もよく、短いためやや強引なところもあるが、いいドラマだった。


(※)脚本を読んだとき、主人公のラストの選択がよくわからない部分もあったが、映像では露骨に病院でいちゃつくカップルを主人公が黙ってみるシーンが、作品上重要な意味をもっていて、ラストの決断につながるフックになっていると感じた。