ASHITAKAAkino

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン シーズン1のASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます


1-1
女が鉄の玉座に?

1-2
何を祈ればいい?
好きなことを "神々のみぞ知る"よ

1-8
真の王妃は民に犠牲を払わせない
でも結局男に仕えるのね 父親に仕え夫に仕え息子に仕える


あらゆる権力は民が許し与えるものです


2023年TVシリーズ7本目

ようやく観たHotD。最初はスピンオフかぁ、という感じで気乗りしませんでした。ただ蓋を開けてみると、SNSでの盛り上がりよう、世界的にも視聴数は昨年で1位?という具合で、テレビの前で正座。そもそもスピンオフというジャンルは、ひと昔前のクオリティが下がってもいいからもうひと稼ぎ、とは異なり、良質以上に破格のエピソードを連発。スピンオフの定義も再定義された2020年代。めちゃ本気。チームとして、スターウォーズやMCUのフランチャイズができていないことをちゃんとやっています。

GoTの反省を踏まえたのか、恐ろしいくらいに物語の進行速度が早いのは、ある意味ではわかりやすさを担保すると同時に混乱の原因ともなっています。けどそこは解説考察を読んでゆっくり理解していけばいいかなと思いました。説明台詞は極限まで省いていて、役者の台詞や表情、反応、行動で判断したり理解したりしないといけないので、それはそれであり。元来、映画(ある意味では10時間の)は映像で語るものですから。

物語の解説考察は溢れているのでそちらを参考にするとして、本作は前日譚。ターガリエン家がどうなるかはみんなわかっているけど目が離せない面白さ。没落、内戦、内部崩壊、お家騒動、スケールのでかい家族喧嘩、王位継承、という感じで形容できるし、実際まだ始まってもいないのにこの面白さ。エログロ、容赦なく主要キャラが唐突に消され、上質な政治劇の展開と、GoTの良さを更にアップデートした理想型。
大きく異なるのはGoTはメンズが中心な気もしましたが、今作は女性を中心に物語が駆動しています。妊娠、出産、血、世継ぎ、妻として、母として、女として、人として、その語り口は現代の問題ともリンクする。物語を取り巻くイシューはどこかで私たちの世界と繋がっており、それは優れた作り手が注意深く物語を構築した結果でもあります。

印象に残ったところを列挙。
椅子がヴィセーリス王を傷つける。王に相応しくない者を椅子は拒絶する(GoT知らない人が見たら陰謀と思うかも)から。古代のとんでも医術に悲鳴をあげる。5epで主人公のキャスト切り替えで、おいおいとなるも子役も大人版も素晴らしい演技。王子のレイプ問題を王妃という女性が揉み消す、というグロテスクさとそれこそ今に通じる問題。プロミシングヤングウーマン案件。最初はいい人そうだったのに君のために邪魔者は消したよ(ニコ)みたいな足フェチのヤバい奴もいる。ヴィセーリスの最後は王としてでなく父として家族の1人として責務を全うしようとした。登場人物は善悪と簡単に割り切れるようにもできておらず、みんなどこか正しく、またどうしようもなく誤っている。だからこそこの重厚なドラマが出来上がっているのかと思うと震える。生きている人間がそこにいるから。

最後に、同時配信を実現したU-NEXTに感謝とエールを。S2楽しみ。
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