ASHITAKAAkino

エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~のASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます


ep1
物語の中心は常に被害者で加害者には言及されない

私が彼女なら死を選ぶわ

ep4
善人でいて

ep5
家政婦に自尊心はないと?


2024年TVシリーズ4本目

良質な映画のトーンとマナーでつくられたシリーズ。
監督は『The Farewell』のルル・ワン。

切り取って額縁に飾ってしまいたいくらい画が美しい。それと同時に一流レベルの撮影と照明は眼福。舞台は数年前の香港。女性がシリーズのメインではあるものの、シスターフッドやエンパワーメント的な要素は多くはない。むしろ、個としての生き方や感じ方と故郷ではない磁場の化学変化を見せられているみたい。
過ち、間違い、失敗、どうしようもなく誰かを傷つけてしまった人を描く。意図せず加害行為に準ずる行為をしてしまった人のケア、再生を。
加害者の被害性と被害者の加害性も。ベッドの上で罵倒し合う。彼女は自分を罰したかった。私は祟られているとも。何をしてもうまくいかないとき、裏目に出てしまうときもあって、まるで自身を傷つけるきっかけを探し続けているみたい。

ニコールキッドマン演じるマーガレットや富裕層出身のヒラリーも美しすぎて浮いているけれど、人間味があっていい。韓国系アメリカ人のマーシーもいいし、キャスティング基本全部いい。
映画のマナーでシリーズを撮っていたけど、ep5でもはや映画のボリュームに。最高。カメラは距離を置く。これは群像劇だということを改めて思い出させられる。台風の1日。主役として扱われていなかった(カメラの位置や照明の当て方すら意図されたものだったようにも)フィリピン人家政婦たちに。彼女たちにも名があり、生活があり、夢があり、家族がいる。女性へのフォーカスというより、母と娘というテーマが強く、監督の核にあるものなのかなと想像。

ラスト、赦し赦される。対話であり、独白であり、観客への(カメラは正面に)問いや赦しのようにも。鳥肌。共感や移入なんかそっちのけで構わないから、限りある想像を。雑踏に消えていく。その後の彼女たちがどうなったか、という余韻は続く。

車のシーン、全部良い、良すぎ。カーペットを担いで歩くヒラリーを追う撮影、好き。『Succession』のシブと同じグリーンのドレスを着るニコールキッドマン、最高。舐めるように様々な角度から香港を撮る。それこそニューヨークみたいに。香港、行ったことはない。けど、素敵な街だと思う。

今年のAmazon Studioは豊作。
減点要素はほとんどないけど、あえてあげるならサブタイトルはいただけない。観れてない、あるいは観てない人が関わるとこうなる悪い手本。タイトルのイメージで損なわれるものもあるように思いました。
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