たかさき

アンブレラ・アカデミー シーズン3のたかさきのレビュー・感想・評価

4.1
S3、面白かったですね〜
このドラマ、めちゃくちゃ気を遣ってるのが「様々なきょうだいの組み合わせでの対話シーン」が用意されていること。行ったり来たり、交互に交わり、キャラクターの関係性が「組紐」のように連綿と紡がれて、強度が上がっていくのが分かります。

ヴァーニャ→ヴィクターへの変化を受け入れる家族のシーンも丁寧に描かれていて良かった。アリソンはもちろん、カムアウトの後からやってくるルーサーとの間にも忘れずに、しっかりと対話のシーンがある。

キャスト名は、シーズン1〜も「エリオット・ペイジ」表記に変更されていました。素晴らしい。
 












⚠️⚠️⚠️以下ネタバレ⚠️⚠️⚠️

















良かったところは…

ダンス!!!!!!!!!!!!!

最高の幕開けでした。



歌う。祝う。踊る。歌う。

このドラマに必要不可欠なパーティータイムも要所要所に目白押し。



そして、やっぱりキャラクターと家族の繋がりが豊かですよね。S2で爆上がりした魅力をしっかりと引き継ぎつつ。ルーサーとディエゴの可愛いさはもちろん、今回は特にクラウス。物語の推進力になる役割でありながら、誠実さと家族愛が輪をかけて高まっている。今シーズンは一番好きなキャラですね。あと、改めて考えると、「特殊能力を持つキャラクターたち」が主人公でありながら、このシーズン、ルーサーとディエゴとクラウス、全然能力使ってバトルしてないんですよね。S2も大概そうだった気もしますが。なのにこれだけ面白いという。確実に能力<キャラの人柄が魅力として上回っている。良いドラマですね。



スパローアカデミーとの対立が軸かと思われた今シーズンですが…早々に退場。これに関してはメタ的ですが、主要キャスト・ベンの肉体獲得から逆算された展開以上の狙いが見えなかったような気がする。正直スパロー間の葛藤やつながりの深みが見えてこなかったですね。それは「実力主義で家族として成立していなかった」としても、その冷たさも深掘りできていない気がする。ここがもう少しうまくいっていれば、新しいベンの魅力ももっと膨らませた上で次シーズンに行けたはず!もったいない。


話運びに「それぞれのついた嘘」が絡むこと、そしてメンバー間の情報共有不足がさらなる面倒を呼び込む展開が少しだけストレスフルかな?「カバンもう5が持ってるよ」と思いながらアンブレラとスパローのいざこざを見ているのが少しノイズになっちゃった。

別のタイムライン、パラレルワールド、裏の世界、リセット(再構築)された宇宙、様々な概念が洪水のように押し寄せるのは、楽しさでもあり、煩雑でもあり…?

狭い廊下や番人のビジュアルから、僕の大好きなドラマ私立探偵ダーク・ジェントリーを彷仏とさせるオブリビオンの世界。とんでもワンダー感マシマシな不気味な雰囲気はワクワクしましたが、「裏側」が特にギミックとして生きていない(同じセットを使えるだけのシンプルな別世界というだけな)感じがちょい惜しい。

なだらかに批判ポイントに話題が移行していますが…ちょっとアリソンのキャラクターの扱いには引っかかりがありますよね、このシーズン。そんなに話が分からない人じゃなかっただろ!

「娘への愛情」をキャラクターの行動原理の人質にされているような感じですが、シーズン2でそこまで娘に固執してたかといえば、さすがにそこまでではなかったし…。言ってしまえばあの時代で新しい夫を見つけて新しい生活を築きあげていたわけで…。

あと1番引っかかるのが、「娘が存在しない嘘のパラレル世界」に大きな拒否を示しているアリソンが、そんな「嘘の世界」の中で自分たちの母親がハーランに殺されたことに異様なまでの怒りを覚えていること。

だって元の世界に戻りたいなら、この世界で自分の母親が殺されていようが関係なくないですか?まぁそれを隠していたヴィクターの嘘にイラついてるっていうところもあるとは思いますが、それにしたって、あそこまで盲目に家族を危険にさらす選択をするまでに至らないだろう。

少し似た状況として「ノー・ウェイ・ホーム」のサンドマンがある。「どうして味方だったのにあんな急にヴィラン側についちゃったの?」と疑問に思っている人がSNS上にちらほらいましたが、正直あっちは筋が通っている。

「娘に会う」を最も優先していて、スパイダーマンを倒すではなくボックスを奪うというところに集中しているから。

ただアリソンに関しては…ちょっとね…。これまで2シーズンかけて描いてきたきょうだいへの愛情は、娘への愛と天秤にかけた時に「ここまでないがしろにされるわけがない」からだ。彼女が最後に身を投じた、最愛の娘と、本当はその父親じゃない自分にとっての最愛の夫がいる家庭、ちょっとグロテスクじゃないか?やってること、めちゃくちゃヴィランだと思いますけど。

最近似たようなことがあったなと思いましたが、「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」でのワンダですね。

※こちらの記事を参照↓

https://note.com/ladder_daruma/n/n8c79c62440ed


これもそうだ。脚本が「母親から子への愛」を人質にして、キャラクターを都合のいいように動かしているように見えてしまう。

子を想う気持ちが行動理念を狂わせるんです。

それは良いけどさ、そこに何の葛藤も無いように、人がまるで変わったように描く事はキャラクターに対して真摯じゃないだろ。で、シラを切ってたのに、腕を鎌で切られたら痛かったから本音を話す?ふざけんなよ。


おおぉ〜っとストップ。感想書いてみたら結構ここにキレてたのか自分。なるほどね。まぁビンジウォッチしたせいもあるかもしれないけど、2話でヴァーニャがビクターであることを心から受け入れたアリソンと、終盤のアリソンの乖離が凄すぎる気がしちゃうんですよね〜、やっぱり。

良かったところに話を戻してみましょう。

世界の終末の中での結婚式で丸々一話使う感じは好きです。20数話あるシーズンのドラマの中でたまにある「ワンコンセプトお遊び回」っぽくて。

ライラに、スローンに、違うベン。シーズンを重ねるごとに家族の射程がどんどん広がっていく感じもとても好きです。
たかさき

たかさき