トロイア戦争を題材にしたお話。
有名な、それこそ、歴史の教科書にも乗るほど重要な戦争を扱う史劇というのは、
結末が既に知られているからこそ、どう物語を展開させ、斬新な見せ場を作るかが重要だと思う。
その点において、この作品は、オリンポスの神々の描き方が斬新でよくできていると思った。ゼウスの俳優役が黒人男性というのも、個人的には凄くいいなと思った。他の作品とは違い、いい意味で異彩を感じる。
神話と歴史が渾然一体となった多くの古代ギリシアの読み物たちは、映像化の難易度が特に高いわけで、ファンタジー要素に全振りしてもいいし、信じるのは神ではなく、結局は人間なのだという至極現実的なオチにしてしまうのも、なお良し。
だが、これは、2つの世界観を壊さずに、いい塩梅で物語に織り交ぜていく。
人間関係の機微も楽しい。愛情があったり、憎しみがあったり、緊迫感があったり、絶望感があったり。神々への不信があったり、信頼があったり。
最後は、やっぱり、トロイの木馬で結末を迎えた。
歴史好きは、ワクワクが止まらない。そして、ここまでが『イリアス』のお話。
この後、ギリシア側のオデュッセウスは、難破して妻のいる母国に帰れず、途中苦難の連続なのだろうなぁ、王女ナウシカと会うのかぁ、だったり、
運良く助かったトロイア側のアエネイスも、ローマ人の祖先になるのかぁ、だったり、
『オデュッセイア』『アエネイス』に続いていくそれぞれの物語に思いを馳せるという楽しみ方も出来た。