スカーレットウィッチことワンダの手により記憶と力を奪われウエストビューの町に閉じ込められていたアガサ(キャスリン・ハーン)だったが、謎の少年(ジョー・ロック)と旧知の仲である魔女リオ(オーブリー・プラザ)の来訪をきっかけに記憶を取り戻し、失われた力を取り戻すため“魔女の道”と呼ばれる試練に挑むことになる……というお話。
『ワンダヴィジョン』のヴィランであるアガサをフィーチャーした作品。MCUでヴィラン主人公は初めてなのかな?なかなか渋いところを突いてきたが、演じるキャスリン・ハーンの魅力も相まってアガサは良キャラだったので割と楽しみにしていた。
ただ、正直なところ序盤はだいぶ退屈だったと言わざるを得ない。魔女の道に挑戦するために魔女の仲間を集めることになるんだけど、アガサの目論見もわからず、少年の正体も謎、他に出てくる魔女もどういう立ち位置の存在なのか不明で、このドラマがどこに向かっているのか見当もつかないままフワフワした話が続くのでいまいち興味が持続しない。人死が出るなどシビアな展開もあるが、まだ関心が持てていない状態でササっと死んでしまうので、無理やり話にフックを作ろうとしているように見えてしまう。全9話だが、5話くらいまでは割と低空飛行気味だった。
流れが変わるのは第6話で少年の正体が明らかになるところで、この物語が何を目的としているのか?という部分が明らかになり始めると俄然面白くなってくる。続く第7話、長生きな魔女のリリアがメインの話は大傑作で、40分程度の尺で『スローターハウス5』みたいなややこしいことをやりつつ、最後は切なくも爽やかなオチがつく軽やかさがとても良かった。
そこからも、他のMCU特有の大味バトルで終わりがちなドラマシリーズとは趣向を変えて、バトル展開は早めに切り上げて物語の掘り下げに力を入れており、最後までしっかり楽しかった。最初だけ楽しくて後は尻すぼみなドラマシリーズが多い中で、ちゃんと段階を踏んで面白くなっていくのは好印象。それだけに序盤の語り口の雑さがもったいないが、トータルではなかなか楽しめたかな。