マヒロ

TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブのマヒロのレビュー・感想・評価

4.3
1995年、アメリカ南部の田舎町で若い女性が呪術的な装飾をされた変死体で発見される。捜査にあたるのはいかにも南部の男という感じの保守的だが気の良いマーティン(ウディ・ハレルソン)と、哲学的思想の持ち主で無神論者な変わり者のラスト(マシュー・マコノヒー)の二人の刑事だが、お互い全く違う思想の性格でありなかなかウマが合わなかった。一方で、2012年になり解決したかと思われた1995年の事件に関連するような事件が再び起き、ある理由からコンビを解消していたマーティンとラストは招集され取り調べを受ける……というお話。

二つの時間軸をメインに、女子供をターゲットにした異様な事件を追う刑事を描いた作品。シーズンはこの後も続いていくが全く違う話になるようで、この事件についてはあくまで今シーズンのみで完結という海外ドラマにしては親切(?)な設計。全8話各1時間くらいで、ちょっと長い映画みたいな感じで楽しめた。
政治や宗教の腐敗、カルト信仰、薬物依存、猟奇殺人、家族や仲間との不和などこの世の地獄かというくらいろくでもないことが起こりまくるが、基本的にはドライなタッチで淡々と事件を追う形になるのでそこまで嫌な感じはしない。
主演二人はカッコいい男と言ったらこいつらと言っても過言ではない最高のコンビだが、特に『ダラス・バイヤーズ・クラブ』でアカデミー賞獲る前後と思われる一番脂の乗っていた時期のマシュー・マコノヒーの、何をやらかすかわからない怪しい色気と狂気を漂わせる存在感が素晴らしかった。

ドラマならではのラストのヒキも上手く、ラストの語りと共に明らかにやばい奴がその存在を露わにする3話と、事件の見方がガラリと変わってしまうような可能性が提示され一気に緊張感を増す5話が特に良かった。
また、時に映画顔負けの描写が飛び出すのも凄くて、第4話ラストの市街地での銃撃戦を長回しで捉えた場面の緊迫感、最終話で真犯人のアジトに侵入した先に拡がる異様な世界と幻惑的な光景に度肝を抜かれた。詳しくないので知らなかったが劇中度々言及される『黄色の王』はクトゥルフ関連の用語らしく、気付かぬうちにコズミックホラーにすら肉薄していたということにまた驚き。ドラマを観ながら並行して『Bloodborne』もプレイしていたので、謎を追う内に宇宙的恐怖に遭遇してしまうという構図が被っていたことに不思議なリンクを感じた。発表年が近いので単に流行りだったのかもだが。

刑事ドラマとして、アクション、ミステリ、人間模様と欲しい要素が高水準でまとまっており、尚且つ素晴らしい演技とオリジナリティのある展開を待つ文句なしの傑作だと思う。
マヒロ

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