yassoon

39歳のyassoonのレビュー・感想・評価

39歳(2022年製作のドラマ)
3.8
幼馴染、という表現では言い尽くせない深い関係性を育んで39歳を迎えた3人の女性の物語。

ミジョ、チャニョン、ジュヒ、どのキャラクターも素晴らしいが、特にチャニョンを演じたチョン・ミドは難しい役柄での演技が光っていた。エピソードが進むごとに徐々にやつれていくのも大変だっただろう。終わりが迫る自らの生をどう生きるか、大切な人達、家族、親友2人に何を残せるか、の正解が分からない問いに対する答えを模索する。これを観て『自分ならどうする?』と置き換えた人も多かったはず。個人的にはなかなかスポットの当たらない「ごく普通の人」ジュヒのストーリーが立ち上がってくるパートが楽しみだった。ロッテ百貨店でのクレーマーとのやり取りや年下の中華料理店シェフとのなかなか進まないロマンス、いずれも見どころがあったと思う…という楽しみ方をしたので、主演のミジョの描き方は物足りなく感じた。パニック障害、という設定ももう少し上手く使えたのでは?と思う。

基本的には韓国ドラマの王道テーマ、友情・恋愛・貧富の差・不治の病と死・子供の生き方を否定する親がカバーされた(あと財閥が入ってないくらい?)安心の作りだった。ミジョのお姉さんのように、必ずしも結婚が人生のゴールではない、と考える人がいるのも今っぽくていい(彼女が妹でも血の繋がっていないミジョに特別な想いを寄せている、という展開なのかと思ったが…それは詰め込みすぎか)。

とはいえ残念に思った点はいくつもあって、
・交通事故シーン、もう少し説明が必要では?あれがチャニョンが俳優業を諦めた理由なのか?というのもモヤモヤするし、いつの出来事か分かりにくいので、不治の病で別れを告げる前に事故で亡くなるというシーンがいつか出てくるのかと最後までドキドキしていた(終わって再度観直してやっと理解できた)。
・ケーキ屋さんの窓ガラスを割って予約したケーキを回収しようとするシーンは引いた…。いくら何でもやり過ぎだし、友の為とは言え法を侵す事を解決策とすべきではない気がした。
・ミジョの実の母、出てくるのはいいのだが、債権者が病院に押しかけて脅迫するところまで必要だったのだろうか。話を複雑にしただけで、結局実母のエピソードはどこへも行き着かず終わってしまったのは残念。
・同様にソヌの毒父も毒父のまま終了。全員が善人に変われるわけではない、というのは分かるけど、あれだけのインパクトと沢山の人への迷惑度から言えば、何かしらの決着はつけて欲しかったのが本音。ミジョの実母との対比で「産んだ人」「育てた人」のどちらも絶対ではなく、自分にとっての「大切な存在」こそを大事にすべき、のメッセージなのかな。
・話の転換点をスマホの着信やメールに頼り過ぎ。楽しそうに話しているところに、バッグに入れてたスマホにメールが来て「えっ…。」着信が来て「まさか?」みたいな感じの繰り返しが単調に感じた。

最後の数エピソードはもう少し気持ちを盛り上げる話もあって良かったかな?と思うが(それだけ前半の5話くらいまでが素晴らしかった)、実際に人を看取る際もこういう淡々とした日々が過ぎていくのだろう。チャニョンが表明した「ガン治療を受けない」という選択は個人としてはあっても良いが、治療で助かる可能性はあるのに同様の選択をする人が増えてしまう影響を製作側は考慮しているんだろうか…と心配になった。MCUドラマ『ムーンナイト』のように「専門の医師の診断をちゃんと受けてください」という注意書きがあったかまでは確認していないが。

…と色々述べたが、全体としてとても良くできたドラマだし、「大人が直面する現実」を扱ったこういう見応えのあるドラマを日本でも観たいなぁ。
yassoon

yassoon