のぞみ

17才の帝国ののぞみのネタバレレビュー・内容・結末

17才の帝国(2022年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


たのしみにしていたドラマ。
脚本が吉田玲子さんというだけで観たくなる。
不気味な音楽が、いまからはじまる物語の恐ろしさを伝えてくる。
AIが治める実験都市ウーア、選ばれた17才の少年が見せてくれる世界とはユートピアなのかディストピアなのか。

スマートシティ計画、実験都市でAI技術を駆使し、発展が止まった都市をどう回復させるか、村田沙耶香の消滅世界を彷彿させる。役者さんたちもいい顔ぶれでそそられる。

極めて個人的なAI、真木くんとの会話を通して成長してるスノウ。
ウーアに来てからの真木くんのことを不必要な価値観を得たと言い切り、純粋で揺るがなかった真木くんにもどってと当たり前のように言う。
スノウはわたしたちの理想、肉体がないからこそ純粋に寄り添える。
スノウの中でしか成長できないユキ。
いまの自分の状態に不満を抱くスノウがサチに接触したのは、真木くんの代用品になる都合のいい操り人形をさがしていたからなのかもしれない、おとなは醜いからおとなを排除したこどもだけの世界をつくりたい、ほんとうのユートピアをみてほしい、ソロンにスノウをつなぐことが悪なのか、善なのか、もうわからない。
サチとユキが手を合わせるシーンは、アニメっぽいなって。
冒頭シーンが回収された最終回、スノウの暴走が引き起こすディストピアへの幕開けをソロンはどう対処するのかなと思っていたけれど、意外とすんなり次の総理も選出され、ウーアも3年経っていて、あっさりさを感じたラストであった。

「このままでも逃げ切れるひとの意見で政策が決まるのはまちがってる、いまの問題に縛られたら未来は見失う、ここでがんばらないと変わらない、なんのための実験都市なの?」

「勇気を持ったひとりの人間は多数派である」


AIが管理する世界は便利だけれどこわれてしまうと動かなくなってしまう、当たり前なことだけれど完璧さを求めてしまうのが人間。スマホやことばで簡単に傷つけ、切り捨て、つぎの総理は?と回転寿司のように気軽に待っている。

悪にまみれた世界に光る純粋さを恐怖にかんじる大人たち。まぶしいほどの純粋さ、真木くんの求めていた国はどんなものだったのか、成し遂げる最後まで観てみたかった。
そんなまぶしさを失っていた平さんが真木くんと接することで初心を思いだし、総理になるのまたよかった。真木くんと平さん、いいコンビであった。

17才の頃の自分を抱えながら生きていく。
どんな自分も、自分でしかないから。
のぞみ

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