ねまる

マイファミリーのねまるのネタバレレビュー・内容・結末

マイファミリー(2022年製作のドラマ)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ニノの娘の誘拐から始まった1話。
これ、1クール持つのか?と心配になったが、その後ひたすら上り調子を続け、最後までハラハラドキドキを消さず走り切ったドラマ。

子供の誘拐が立て続けに起こるというハードな状況下で、それをひとつにまとめ上げた脚本の黒岩さんに拍手。
そして、その脚本を組み立てる上で生じるどうしても無茶な箇所を、演技力で黙らせたキャストの皆さんにも拍手。黙らせるというか捩じ伏せる。

ニノはやはり演技派だよなと思いつつも、ニノだけに見せ場を作るのではなく、それぞれの見せ場の造り方が上手かった。
高橋メアリージュンに社長を解任するよう電話するシーンがベスト。あの決断に行くまでの1クールを凝縮したようなシーンになっていて良かった。
多部未華子の存在感も良いし、もう1人の主人公とも言える玉木宏の支えによる安定感。
自らの正義で動く人間は1人じゃ無い。
そんな違う正義だった二人が、最終回の冒頭重なり合って、交互にカットを割ることで、最強タッグになることを予感させる演出の格好良さよ。

誘拐事件の真犯人が誰だったかなんて正直どうでも良くて、そこをあえて外しているところも計算だったのかな?って。考察には一応解は与え、物語は玉木宏でカバーし、本筋の家族の話で完結させる。

その犯人探しへのちょっとしたがっかり感(ごめん、富澤さんは嫌いじゃないです)を全て払拭する濱田岳の神演技。
9話の罪の告白シーンからずっと神。後から思えば1話からずっと神だったのかもしれない。
わたしから与えられるマイファミリーへの賞賛は全て濱田岳に捧げたい。
私はこの濱田岳の神演技を見るために1クール観たのだと思っても良いほど。
精神的にかなりきつい状況でのお芝居お疲れ様でした。こちらもかなり消耗して、とどっちを想うだけで涙が溢れてきます。
(ドラマアカデミー賞の助演男優賞の時のコメントで「前世で何か悪いことしたのかな」って言っててそれだけしんどかったんだろうなって)

どんな気持ちで5年間過ごしてきて、どんな気持ちで親友の子供を誘拐して、どんな気持ちで真相を知ったのか。
辛過ぎて、辛過ぎて、主人公たちのハッピーエンドが目に映ってるはずなのに、心に映らない。
会えたのか?のあの台詞とその表情が頭から離れない。
三輪に手足を結ばせ、温人に頭をビニール袋で縛らせスタンガンで気絶させた覚悟が忘れられない。

この役が濱田岳で良かった。
こちらが同じ目線に立てるような、観客に自分の目線で世界を見せるような、観客に同じ感情を抱かせるような、そんな俳優さんだから。
それでも最後、東堂には一寸の希望も与えない脚本がすごい。
鳴沢家に新しい命が誕生するのと並行して、小春ちゃんの死を示す場面が挿入される。
誘拐は最も卑劣な犯罪。東堂はそれを犯した人間たちだから。情は許したくても、罪は罪だというフィクションなりの絶望的なまでの突き放し。小春も自らの提案が元というところも憎い。誘拐による家族関係の修復を描いてはいるものの、倫理上それを良しとはしない。その一方で、東堂と奥さんの悲しく美しい場面を作る、罪を憎んで、人を憎まず的な切り離しがされていたのかもね。

さすがTBS。
ねまる

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