サンタフェ

Pachinko パチンコのサンタフェのレビュー・感想・評価

Pachinko パチンコ(2022年製作のドラマ)
5.0
2022年ベスト確定です。

今年ベストというだけではなく、もういっときこのレベルの質の作品は生み出せないのでしょうかと感じました。題材のインパクトもあり、AppleTV+が立ち上げで勢いがあるというのもあり、全てのタイミングが合わさった奇跡的な作品と思えます。

あまりにもよかった要素がありすぎて何から言及すればよいか…。

まずはAppleTV+安定のキマった映像と演出が最高でしたね。また役者や舞台考証も素晴らしかったです。”在日”と”日本人”で明確に配役を分けていたのが伝わってきたのが印象でした。とりわけソウジ・アライの演技はこの作品の完成度を何段階も底上げしたと感じます。Pachinkoで話題になったことでアライさんはいくつかのインタビューでこの”在日”というアイデンティティに言及しており、とても学びを得ました。また難しい役どころであっただろう(在日で日本語話者だけど14歳からずっとアメリカ暮らし)ソロモンを演じたジンハも日本語への並々ならぬ努力を感じさせました。彼の日本語への批判がちょこちょこ見られますが、そもそも彼は役も14歳から在米。喋る気がないのではなく努力してなおイントネーションに多少の差があることに対して「日本人じゃない」を言うことそのものが非常に差別的な姿勢であり、本作の意義をなおさらに浮かび上がらせます。

米製作の日本が出てくる作品となると避けては通れない雑JAPAN問題ですが、このクオリティなら任せてもよいかなと思える出来でした。嬉しい。関東大震災の7話では当時の遠景もできるだけ再現していたのが伝わってきてよかったです。

作品のテーマとメッセージについて。原作は未読ですが、観る前になんとなく入ってきた情報から日本人は観るの辛いかな〜と思っていましたが、バランスの取り方が最高でしたね。当たり前ですが日本人にも良いやつと悪いやつがいて、それはそれとして一般的な雰囲気として差別や日本政府の全体主義は存在して、韓国は韓国で在日を朝鮮人とは受け入れない現状があって、という描き方がしっかりしていました。いつも韓国人だけが味方、日本人は悪いことした、みたいな説教臭さも全くなく、いわゆるポリコレ作品にありがちなメッセージの押し付けがましさもほとんどありませんでした。本編後の字幕説明は日本人としてはなかなか胸が痛いものがありましたが…。

近年Netflixが作品題材の現地製作を推し進めていることもあり、昔のハリウッド的な「世界をアメリカを通して伝える」ことの意義がほとんどなくなっていると私は感じていました。資本と技術は提供しても、製作者は現地の人々というのが一つの理想でありこれからの流れだと感じていたのです。しかしPachinkoはまさにアメリカが中継しなければ日韓当事者では生まれ得なかった作品でした。こういった作品を生み出せるなら、アメリカの役割もまだまだあるな〜なんて感じてしまいました。

1930年代と1989年を並行させるという手法はドラマオリジナルということでしたが、それが最高にハマっていました。テーマである血筋が、不条理な差別にも表れていたり、誇りとしての選択に表れていたり、と二面性を描きていたのが素晴らしいです。日/韓の善性の話もそうですがどちらもあるという描き方がサラッとしていて素敵でしたね。ゆえに主人公であるソンジャの生きることに真っ直ぐな強烈なパワーが輝いていました。最終話は本当に胸にくる場面がいくつもありましたが、ラストシーンのソンジャが懸命にキムチを売るシーンがこの作品を象徴していたように思えます。大好きなシーンです。

コーダでアカデミー賞を受賞し乗りに乗っているAppleTV+ですが、Pachinkoは正式にエミー賞のキャンペーンをするそうです。ぜひ獲ってほしいですね!テッドラッソ、コーダ、Pachinkoでエミー賞(コメディ/ドラマ)アカデミー賞の三冠を制覇してほしいものです。
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