2022年。心霊ドキュメンタリーの若手監督&盟友のカメラマン。高校時代の知人から彼らの元に奇妙な動画が送られてきたことではじまる呪いの物語。
実際の心霊ビデオスタッフが総出で現れて大捜査する『心霊マスターテープ』1、2はドラマを標榜しつつ準フェイクドキュメンタリーの趣があり、同時に「お祭り」的な楽しさがあった(人は死ぬ)。両作の監督・寺内からバトンを渡された谷口猛はこれらの明るい雰囲気を完全に封印し、重く暗く湿り気のあるまったくの「ドラマ」として本作を練り上げている。
前作前々作と比較すれば地味だし、送られてくる映像が全然怖くないのはちと気になる(野暮かもしれないが書いておきたい)が、ダウナーな暗さと怖さが観るものをグッと掴んでくる。浴室入口での母親の慟哭のシーンなどすさまじい痛々しさだ。そして別物とは言えど前任の寺内が拘っていた「撮ることの暴力性」「撮る者が撮り返される恐怖」を、若き日々に置き去りにしてきた罪と罰という形で純化・尖鋭化している。
期せずしてかこの物語が、まさに「心霊ドキュメンタリー」誕生の契機となった元祖・呪いのビデオこと『リング』に接続するような展開になることに、心霊ビデオ四半世紀の歴史を感じざるを得なかった。まったく救われない。アッパーではないが腹に溜まるホラードラマ。