れいん

エルピス—希望、あるいは災い—のれいんのレビュー・感想・評価

4.5
長澤まさみさん鈴木亮平さん、これはみるしかないでしょう!ということで完走。
各一話、時間感覚がおかしくなるくらいのめり込んで観ていました。すっごーくおもしろい!心の高揚感、前のめりになる!の連続!というわけではないのになぜかすごく面白い。分からないのに面白い。
犯人が誰かとか、最終的に悪いやつは誰だ?血祭りにあげてやれ!を最終回答に置いてないストーリー性になるほどと思いました。最終回に進むにつれどこに落とし所を持ってくるのかとハラハラしましたが、そこにきたのかーって誰かが犯人とかじゃなくて真実を伝えることの大事さや誰かの思いを伝えることの大事さの納得さ。犯人捜しが軸ではなかったのだなという、人間の様々な葛藤や想いを覗けたドラマでした。
この脚本を今、この時代に書いてくださってありがとうございますと脚本家の方に何度も思いました。テレビや報道、新聞、ネット、私たちは誰かが取材したものを受け取っているけどそれってどこまでが真実なのか分からないもので判断しているのではないのかと少なからず考えるきっかけにはなりました。このドラマが真実ではないけれど、裏ではこういうことが今までいくつもあって不正確なものも真実だと思って受け止めてしまったり嘘や建前のニュースも流れるようにみていたかもしれない。明らかなタブーをテレビでドラマでやろうと思ってくれてその気概がかっこいいと思いました。長澤さんにオファーかけて6年越しに実現して、退社してまでこのドラマを作ってくれてありがとうございますの気持ちしかないです。
何度も鳥肌が立ったので怖いなぁ、でも覗いてみたいという好奇心が湧くストーリーなのですが、一番怖いのはエンディングでした。毎回ほぼ変わるのですが意味が分かりそうで分からない仕掛けがとても怖かったです。考察とか見たりしましたが、分からずじまいですね。なにかを必死に伝えようとする浅川さんを冷たい目で見つめるチェリーさんがまるで、テレビの向こう側の人と真実とはなにか?という冷めた目でみる我々視聴者という図がなんともいえないです。
ドラマ内で度々、女性蔑視や差別セクハラのような言葉が飛び交うので新鮮でした。長澤まさみさんにそれ言う?と思ったけど意外と言葉通りの老け方してたので、俳優って化けれてすごいなーと思いました。だってすごい綺麗なのに、このドラマでは極力化粧をしてなくて素に近く老け感出してますから。
鈴木亮平さん、演技がしつこすぎてやりすぎ感すごくてちょっとこのドラマには合いすぎて良いけれど、あまり好きじゃなかったです。それが狙いなのですかね。
眞栄田さん、今までイマイチ良さがわからなかったのですがこのドラマでの落ちぶれ方から徐々に上がっていく様がすごい表現力でとても良かったです!
岸本のママ、彼女のこと嫌いになれなかったです。きっと大変な苦労やさまざまなことがあったからこそ、彼女なりに生きていくことに必死だったんだろうと思います。岸本の友達と仲良さそうなのも良かった。母親って難しいよね。
村井さん、最初この人どうしようもねーなーって観てたけど彼が一番素晴らしかったですよ。みんな見て見ぬふりして自分のこと守ってるだけなのに、溜め込んだみんなの大事な想いをずーっと我慢して我慢しきれなくて吐き出してくれたのグッときた。おじさんでもやるときゃやるのよ。
印象的な人物が多すぎて、一人一人演技もガチに本物すぎて途中でこれは役じゃなくて本物でこのストーリーも真実なのでは?と思い始めるくらいでした。
眞栄田さん、テレビ出ると食べるものは徹底して節制してるのをよく見かけていて大変だなぁと思ってたんですがエルピスで美味しそうに高カロリーなものを食べているシーンが頻繁にあるので逆に心配になっちゃいました笑
長澤さんも食べられなくなってしまった役なので細いし干からびてガリガリ感がすごかった。凄まじかった。オーラもピリピリ感も画面から伝わってきました。
全部終わってからの牛丼屋さんでのやりとり、とっても大好きです。本当に心から美味しそうに頬張っていて、後からきたであろう村井さんに向ける笑顔といったら。良かったねぇ!今までの頑張りが報われて!の気持ちでした。
裏切られる、権力に潰される、の連続なので人間て誰一人自分以外は信用できないなって思ったんですが、最終話の浅川さんの「希望って……誰かを信じられるってことなんだね。岸本くんありがとう。君がいてくれから、私、今日までやってこれたんだね」の言葉がとても心臓にきた。

私的印象深いシーン
①岸本がどんどん落ちぶれていく様、若者に居場所探ってんじゃねぇよってリンチされそうになるとこ
②ファミレスで雑炊かっこむとこ
③岸本ママが岸本友達と岸本と三人で食事したところとその後
④マキタスポーツ編集長が村井に浅川さんのことババアと言った後の反応
⑤岸本がホテルで浅川さんの電話をとったところ
⑥岸本が風俗で働いていた殺された中学生の友達だった引きこもりの子に会いに行ったところ
⑦瑛太と浅川さんが出会ったシーン、たったあれだけなのにすごい存在感の瑛太さん。怖くて鳥肌立ちました。あとすこしタイミングずれたら浅川さんだってどうなってたか

0.5星少ないのは、このドラマのストーリー発端のチェリーさんが途中で置いてけぼりの存在感薄く進んでしまったこと。自殺までしているのに誰もなにも触れず、そんなのはあり得ないと思ったからです。岸本ママが弁護士なのだから、ママが弁護士として関わってくるかと思ったらそんなこともなくちょっとがっかり。知識の無い人達よりもプロの人が身近にいるのに、変な話だと思ったからです。途中の浅川さんと斉藤さんのやりとりが気持ち悪くて、長澤さんと鈴木さんの演技が薄っぺらくて気持ちがとても萎えました。浅川さんの女になったところがとても嫌だったなと感じました。長澤さん、前まで嫌いでした。媚びたような舌足らずな喋り方がとても不快でした。コンフィデマンスJPで好きになったのですが、このドラマでもその舌足らずなところが途中で垣間見えたのでちょっと気持ち的に、うへぇ……(嫌だな)ってなりました。あと、最終話でテレビで真実のニュースを流したときに、それをみたチェリーボンボンの人達が泣いてたりしたけどお前ら二人を見捨てたじゃんってちょっとイラッとしたところです。

今までにないドラマで最後まで楽しくみられました!
最高でした。
れいん

れいん