なべ

シスターズのなべのレビュー・感想・評価

シスターズ(2022年製作のドラマ)
4.0
 オルコットの若草物語を格差の激しい現代の韓国を舞台に置き換え(といってもほとんど原型はとどめていないが)、700億ウォンの裏金をめぐる陰謀に巻き込まれる三姉妹(ひとり足りないよね)と権力者との攻防を描く。
 金で貧困から家族を守りたい長女インギョン(安藤サクラ似)、正義漢の次女インギョン(鷲尾いさ子似)はアル中寸前のジャーナリスト、三女は実力で名門美術高校に通うイネの三姉妹がヒロイン。
 長女はハブられ仲間の先輩が起こした横領事件に巻き込まれるんだけど、その裏金に関わる権力者の不正を追求しているのが次女ってところがおもしろい。お金に対する姿勢の違いがそれぞれの事件をややこしくし、もつれて、おかしなことになっていくから。
 三女も権力者の娘のゴーストペインターをやってて、さすがにそんな偶然は無理があるだろと思うんだけど、そちらの話はまた別の事件として進んでいくから、さほど気にはならない。ご都合主義やトンデモ設定はもちろんあるけど、これは好意的に受け入れられるやつ。
 おふざけなしのシリアストーンで、事態が悪化し、さらに伝説の青い蘭が異なる殺人現場に添えられているなんて猟奇的かつオカルトめいたエピソードなんかも絡んでくるから気を抜けない。
 どんどん死人が増えていく邪悪なムードもとても良き。中でもインギョンの先輩ファヨンがクローゼットの中で毛皮を着て赤いハイヒールを履いて死んでいたシーンは強烈な印象を残す。政治的な事件と猟奇的な事件が表になったり裏になったりするのが絶妙で、ハッとしたりギョッとしたり、飽きさせない(ついていけないって人もいるかも)。1日3話のペースであっという間に完走した。
 女性の生き様を三者三様で描きわけられてるところと、金と権力と青い蘭って組み合わせがミステリアスなところがいいセンス。ミステリーとサスペンスが全12話にバランスよく配分されてるのも巧い。
 韓国ドラマ(特にコメディ成分が多いやつ)には「あれ、こんなところに何か落ちてるぞ。何だろう?うわあ大変だあ」みたいによく喋るものがあったりするけど、これは映画のように現実寄り。変な説明セリフは少ない。お暇なら観ても損はないかと。
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