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モアザンワーズ/More Than Wordsのshizuqのレビュー・感想・評価

モアザンワーズ/More Than Words(2022年製作のドラマ)
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日常のふとした瞬間を愛おしく思えるような、長回しのカットが好きだった。本編が終わった後、エンドロールまで物語は続く。人生は印象的なシーンの切り抜きではなく、日常の連続なのだ。だからこそ、このドラマの主人公たちは実在しているかのような親近感を持つ。まるで隣に住んでいる人のことかのように感じられた。

3人の関係性や決断は、わたしには難しかった。3人がした決断は、エイジの父が反対したことが要因とも捉えられるけれど、彼はただ単に偏見だけで反対している訳ではなく、彼の過去のトラウマから反対していた。3人の決断は、エイジの父だけでなく社会がそうさせたのだ。また、出産後エイジとミエコは夫婦として子どもと3人で暮らしていたが、ミエコとエイジとその子どもが「家族」として戸籍に登録される方が、生きやすいのは誰の目から見ても明らかで、でもそれは彼らが思い描いていた理想とは違っていた。もちろん、納得のいく形ではなくてもそれぞれが日常に幸せを見出して生きていると思う。でも、彼らが望んだ通りの家族の形を実現できるどころか、白い目で見られるような社会は、まだまだLGBTQに対して公正ではない。制度が変わることが一番早いけど、それもなかなか難しいことはわかる。だから、誰しもが他人事と思わず、想像し続けることが大事だと思う。自分は違うからと言って一線を引くことが何より危険。本作然り、こういった映像作品を見ることで、登場人物に想いを馳せること自体がもうすでに社会の問題への関わりになっているのだ。難しいことだけれど、考えることをやめたら終わり。ずっと想像力をはたらかせて、生きていきたいな。

エンディングを見ながら、彼らのこれからを想像した。鴨川と水色の空が平和でのんびり心地よく、これからは何があっても3人で助け合って生きていくのだろうなと思った。
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