岩明均原作「寄生獣」から着想を得た全く異なる物語。ベースは原作コミックや「デビルマン」等のプロットが活かされているのだが、登場人物の造形が浅薄だし肝心のバトルもパワー対決に終始する趣向の乏しさが目立つ。主人公スインにまつわる説明的台詞の多さはまだ許すとしても、脇役のチンピラ・ガンウの動向をもっと深掘りすれば、このパニックの被害者の苦悩を通して物語のテーマを浮き彫りにできる、なのにそのテーマを安易に台詞にして訴えるヨン・サンホ監督の演出はいただけない。
ところでホン・サンス監督作品の常連クォン・ヘニョが刑事役で登場、物語の要となる役柄で活躍していて嬉しくなる。地味な出演作が続く彼の業績を評価してほしいと "推し" のひとりとして願う。
