ブタブタ

仮面ライダーBLACK SUNのブタブタのレビュー・感想・評価

仮面ライダーBLACK SUN(2022年製作のドラマ)
4.5
《敗者達の神話》
神話の世界には初めから負ける宿命にある〈怪物〉達が多数登場する。
『仮面ライダー』においてはは其れは〈怪人〉達。
〈仮面ライダー〉というヒーローに対して其れに「負ける」宿命にある「怪人」達。
『仮面ライダーファイズ』も怪人達の群像劇だったけど更に其れを推し進めて、もう完全に〈現在の日本〉を舞台に人間と怪人が存在し其れを差別・貧困・格差、その全ての問題を内包させて描く。
堂波(ルー大柴)は安倍だしその横でいつも人バカにした様に笑ってる副総理(寺田農)は麻生のカリカチュア。
更には戦時中の満州で行われた日本軍による人体実験〈731部隊〉を思わせる怪人改造生物兵器計画に関わってる堂波の祖父はまんま岸信介。

白石和彌監督は若松孝二監督を映画の師と仰ぎ氏に捧ぐ『止められるか、俺たちを』も撮りましたが『仮面ライダーBLACKSUN』は更に若松孝二作品のテイストが濃厚で『天使の恍惚』『処女ゲバゲバ』『テロルの季節』そして『赤軍派-PFLP世界戦争宣言』の革命と権力への反逆、闘争と暴力の〈負けたる者たち〉の神話を〈仮面ライダー〉という絶対的アイコンでありコンテンツ、その設定や世界観やキャラクターをフルに使って好き勝手やった極めて作家性が強く、それ故に拒否反応を起こす人も多数居ると思われるがそんなの初めから承知の上だろう。

劇中で何度も繰り返される「何故お前らは怒らない?」の問い掛けはそのまま我々への問い掛けだし、最終話ではハッキリと葵(平澤宏々路⇽ひらさわこころ⇽すげー名前!!この人、駿監督の才能無し息子によるジブリ駄作アニメ『アーヤ』の声だと?!)はアマプラ見てる我々に対して直接「差別する連中とは戦わねばならない」と〈宣言〉する。

かように非常に政治的メッセージが強いポリティカルアクションでありifの歴史を描いたパラレルワールドの近代日本の歴史であり、其れを〈仮面ライダー〉というヒーローを主軸に据えて描ききった大作だった。

50年前の学生運動・安保闘争に始まる連合赤軍によるテロ、連綿と続く人種差別、現在のファシズムとヘイト、それ等を〈怪人〉という架空の被差別者の存在を通して革命の失敗と今も負け続けている非支配者達への辛辣な迄のメッセージを込めて送る〈若松孝二監督がもし『仮面ライダー』を撮ったらこうなる〉とも言うべき実に実験的・野心的・白石和彌監督の趣味全開(笑)の仮面ライダーBLACKリメイクだった。

「我々は1度真剣にビルゲニアと向き合わねばならない(笑)」(白石監督・談)
『仮面ライダーBLACK』にはどう見ても変な人がひとり居た(笑)
その名は〈剣聖ビルゲニア〉
ピンク色の鎧を着て顔は白塗り、剣と盾を持ったどう見てもリアル路線の『BLACK』の世界観に合わない一応幹部怪人だが秘密結社ゴルゴム内ではやたら邪険にされ怪人からもバカにされてる不遇の人。
マジカルソード〈サタンサーベル〉を手に入れてさあこれからと言う所でシャドームーン登場により一撃で退場~😭の不遇のキャラクター。
後の劇場版仮面ライダーでも殆ど目立たない背景くらいの出番しかない。
正に不遇。
そのビルゲニアが本作では何と三浦貴大の(ちょっと太めの)肉体を持って転生!!
『BLACK』での酷い扱いの鬱憤を晴らすかの様な鬼畜悪役ぶりから(安易な)改心を経てクライマックスでは美味しい大活躍。
まさかサタンサーベル迄登場するとは思ってなかったし重要なアイテムとしても大活躍だった。

怪人ヘイト人間団体と怪人ヘイト反対怪人達のデモ衝突シーンは怪人の着ぐるみ造形が少しチープで、でも其れがまるでグロテスクなディズニー世界を見てる様で実に奇怪な光景でドラマ全体の中で一番好きなシーン。

ゴルゴム党本部は自民党。
怪人との共存を詠いながら差別を煽ると同時に裏ではズブズブの関係って、まんま自民党と旧統一教会だし、更には撮影時には未だぶっ殺される前だと思われるのにあの人があの人にぶっ殺されるシーンは偶然にも安倍の最後とそっくりで現実が後追いで本作みたいになってる。
あんまり風刺とか暗喩とかは好きではない。
エンターテインメントは純粋にエンターテインメントとして楽しみたいし、矢張りエンターテインメントを楽しめるのは現実の世界がマトモな世界である事が重要だと思う。



そして本作のラストは唖然とする事然り。
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