櫻イミト

プリズナーNo.6の櫻イミトのレビュー・感想・評価

プリズナーNo.6(1967年製作のドラマ)
4.0
「マトリックス」(1999)「シン・エヴァンゲリオン」(2020)「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)の元ネタとして知られる伝説の不条理SFドラマ。1967~68年に英国で全17話を放映。企画・主演・監督(3回)は舞台とテレビを中心に活躍した人気役者パトリック・マクグーハン。

【あらすじ】
辞表をたたきつけて退職した情報部員(マクグーハン)は謎の機関に拉致され,どことも知れぬ場所に作られた「村」に連れてこられる。そこではすべての住人が番号で呼ばれ,奇妙なコミュニティを作っている。プリズナー(囚人)となりNo.6の呼び名を与えられた主人公は村の管理者No.2から「情報」を提供するよう強要されるのだが。。。

噂通り60年代後期の空気を感じるアヴァンギャルドで実験的なドラマだった。主人公は毎回さまざまな手段で村を脱出しようとするが不条理な形で阻まれる。

「1984」(1956)を連想させる管理コミュニティを舞台に社会と個人に関するテーマを、各話ごとに形を変えて抽象的・演劇的に描いている。会話は時に哲学的で、主人公と村の素性については最後まで謎めいたまま解き明かされない。それでも、“自由”について問題提起していることは明白に伝わってきた。No.1は視聴者と解釈。

美術やギミックが独特なのがお楽しみ要素。白い風船装置ローバー、レトロフューチャーな機器が魅力的。個人的には最終回の劇伴がビートルズ「愛こそはすべて」(1967)だったのが同時代イギリスを感じられて印象深かった。

後のサブカルチャーに多大な影響を与えた観ておくべき一本。

■特に重要と思われるエピソード
1「地図にない村」
4「われらに自由を」※
7「皮肉な帰還」
8「死の筋書」
16「最後の対決」※
17「終結」※
※マクグーハンが監督脚本

白い風船ローバー
ビートルズ「愛こそはすべて」(1967)
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