どんとこい侍

透明なゆりかごのどんとこい侍のネタバレレビュー・内容・結末

透明なゆりかご(2018年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

清原果耶さんの等身大のお芝居がとても素敵だった。原作者の沖田さんはお母さんとの関係をこじらせてしまったり発達障害をもっているけど、その部分も一見普通の学生に見える主人公の一部としてしっかり演じられてた。
瀬戸康史さんは勝手に若手俳優さんだと思ってたので産婦人科医を演じることが意外だったけれど、落ち着きと説得力があってよかった。

私も以前、周産期医療の現場に携わっていたことがあります。産婦人科=子供が生まれるおめでたい場所と思われがちですが、必ずしもそうでは無い。むしろ毎日が奇跡。
産まれる前から歓迎されている命、何事もなく順調に育つ命、事情によってこの世に生まれて来る事が出来ない命、ついさっきまで元気だったのに突然消えてしまう命…同じ命なのに、うっすらと生死の境目がある。
特に主人公は「流産」になった命に話しかけている。22週以降は死産=人として扱われるため、「人」とは判断されない命に。私も主人公と同じように「命って何?」ってずっと考えていました。毎日境目を乗り越えて生まれてきたからには、1年後5年後10年後…どの子もどうか笑って生きられますようにと願って、毎日ママと赤ちゃんの退院を見届けていました。

NHKでは再放送もされていたので、世間の注目度も高かったように感じます。作中と同じような展開は今も現実に多々あり、見るのが辛かったり涙が止まらない回もありましたが、主人公のひたむきさが心を打ちました。

現場でも「医療の人間だから死に慣れる」なんてことは決して無いです。経験と知識で何となく命の終わりを悟っても、悲しい事実を伝えなくてはいけない時でも、プロだから患者さんの前では泣かずに気持ちを限りなくオフにしているだけ。患者さんやご家族が悲しい思いをしたり、辛い決断をしたとき、本当は同じように心が叫んでいます。
私にとってはママ側の知識としてだけでなく、働く側としての寄り添い方も勉強になる、とても大切なドラマになりました。