このレビューはネタバレを含みます
前後編90mずつのドラマ。
事件事故は3つ+主人公にまつわる1つ。
なぜ前後編で日を分けて放送しないのか。
見る時間を捻出するのがとても大変。
HDD容量にも余裕がないので。
小芝風花の真面目で溌剌とした若手、
安田顕のオトボケ二枚目のベテラン
というコンビがサクサクと話を前に進めてくれる。
最初のエピソード面白かった。
テストがうまくいったあとで見せた笑顔が
真実を知った後だと悪意に満ちたものにもみえるところがうまい。
気になったのは、事故発生後に現場に到着してすぐ
信号機のサイクル等を調べないのかということ。
停電が起きたことで直後の状態がわからなくなったということなのだろうが、
停電発覚以前に信号機のサイクルに留意した様子がなかったので。
到着後は映像を記録しており、いつでも状況を遡れるからとりたてて話題にしなかったということだろうか。
兄を亡くした女子高生を
大勢の大人が取り囲んでテストをする様子は
とらえようによってはなんとも冷酷非情。
2つ目のエピソードの空き缶ポイ捨て。
執念で犯人の車のガレージまでたどり着いた夫が
たまたま缶を落としてしまったことが
自供につながるという流れがうまい。
夫が男を風呂に沈めて殺して復讐をしたという話にもできただろうが
もちろん缶1つだけで事件が解決した話のほうがずっといい。
最終的には安田顕が殺人者だということが明かされる
なかなかの結末。
大真面目に顛末を考えると
ただの私怨での殺人行動なのだと思う。
「奴は殺人者なのに裁きも受けず……」
といったセリフを言っていたが
男は路上駐車違反者で、素行も悪いが
積極的に奥さんを殺した殺人者ではないので。
その論理が正しいならば
もしその日、15台の路上駐車がたまたまあったならば
殺人者は15人で、15人とも殺さなければいけなかったのか
ということになってしまう。
男が意図的に車で突っ込んできて事故を起こしたならともかく
病院に間に合わなかった理由は他にもいろいろとあり
その複合で悲劇が起こってしまったのだから
その悲劇の犯人として男だけを断罪するのは偏っている。
天国の奥さんは、夫の犯行を見て大いに悲しんでいるだろう。
日頃から正義が信条だっただけに。
では、奥さんが望む行動は何かと考えれば、
やはり
「路上駐車撲滅の啓蒙活動」
「路上駐車厳罰化への働きかけ」
等ということになるのだろう。
最後はわざわざ墓地にパトカーを呼んで護送されるが
酒をのませて奥さんの話をして、山道に車を停めておいただけで
後ろから激しく煽ったりもしていないので
おそらく罪にはならないのでは(もしくは重罪は難しい)と思うのだが
どうなのだろう。
交通課のセットがオシャレすぎ。
大きな天井扇風機に
洒落たテーブルと椅子。
皆が大型テレビを前にお茶を飲むシーンでは「カフェか!」とツッコんでしまった。
実際は業務の合間にお茶を飲みつつ情報収集をしているシーンで罪はないのだろうが。
働いている中の誰かがインテリア好きなら
自然とこのような部屋になるのかもしれないが、
このようなオシャレな交通課は実際にあるのだろうか。
近未来設定ならリアリティを度外視してある程度自由にしていいだろうし、
痛快バディ刑事シリーズならいいと思うのだが
今回の内容であればある程度のリアリティを感じさせるセットのほうがよかったような。
浮世離れしたセットで意図的に明るいシーンを入れることで
真相の暗さを際立たせようという意図かもしれないが。
※2023.03 NHK BS4K