玉生洋一

藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ シーズン2の玉生洋一のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

●『鉄人をひろったよ』
CGできっちりと鉄人を描いていてすばらしい。
風間杜夫の飄々とした演技もいい感じ。犬山イヌコの妻もいい味わい。

コミカルなBGMが入るのがよくない。
非現実的な鉄人を現実で本当に拾ったらどうなるかということを描いた作品で、大げさなものを拾ったのにあまり動じない主人公の様子が面白味になっているのだから、とことん現実として淡々と、環境音と動作の物音のみでやってほしかった。

低空飛行しすぎ。皆スマホを持っている現代では証拠映像をとられまくりだろうと思った。雲の上を飛行する場面は藤子作品ではおなじみだが、実際にはあんなに優雅に飛行できる環境ではないのだろうなぁ。

木は2本抜いてほしかったが、2本だとCGの予算的に嵩むから減らしたのだろうか。

作品の作りは「小犬をひろってきた老齢の男」の小犬を「鉄人」に置き換えたらどうなるかというギャグなので、鉄人をひたすら重々しく大げさに重厚に描いたほうが効果的になる。映像的にはとても重々しく作り込んであっただけに、コミカル音楽演出が残念。


●『マイシェルター』
理想のドラマ化では。
コミカルな場面はきちんと面白く、シリアスな場面はきっちり深刻な演出で描かれている。
ダイナマイトのボタンを押せないくだりの指先と、娘のほっぺを触る指先がかかっているのもいい。
ホームドラマっぽい感じで核シェルターについて語るというのが、かわいい絵柄で恐いことを描く藤本漫画の味をうまく出している。


●『アン子 大いに怒る』
コメディドラマ、漫画の忠実な映像化としてはよくできている。
その分、シリアスさがほぼ描かれなかったのがもったいなかった。
藤本先生の漫画はギャグとシリアスの絶妙な配分が持ち味だと思うので。

役者陣が皆うまく、紅茶のくだりもコントとしてはすばらしいのだが
横浜からの電話までコントになっていたので
そこからアン子の大いなる怒りにつながる「詐欺にひっかかって大金を失った悲壮感」が薄れてしまったような。

荻野目洋子の登場はファン歓喜だが、現在中学生の娘の過去の記憶の中に出てくるお母さんの姿としてはやや歳上か。

洋二とキャッキャ言いながら掲揚棒の周りをグルグルまわるシーンが青春キラキラしてて素敵。とニヤニヤしながら見たが、オチの伏線にもなっていてとても効果的。

かなり駆け足で15分にまとめた印象。となりのおじいさんの詩吟等をきっちり描けば前後編30分にもできただろうけれど、そもそも紅茶の事件自体が映像化してさほど面白いものでもないから15分でよかったのでは。ピリッとしていていい感じ。