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王様戦隊キングオージャーのとがぴのレビュー・感想・評価

王様戦隊キングオージャー(2023年製作のドラマ)
4.5
それ程スーパー戦隊に詳しい訳でも入れ込んでる訳でもない自分ですら、「これは凄い」と思わせる作品だった。特に前半は顕著なのが、国王達がシチュエーション的に共闘せざるを得ない展開に持ち込まれてるだけで、とても「1つのチーム、スーパー戦隊」と呼べるチームではなかったこと。

だからこそ、後半の結託、苦しい展開が続いてもそこから起こるドラマに面白さがあった。第2部に入ってからはロボ戦が極端に減った事や中々スカッとする展開が減った事から批判的な意見が散見されたが、自分としてはそこに意図があったように感じたし、ドラマで魅せようという気概を感じたのであまり気にならなかった。

ただ、ここまでドラマに注力した結果、玩具にほぼ魅力を感じる事が出来なかったという意味では自分の中の立ち位置はかつてのルパパトに酷似している。

各キャラクターの持ち味を活かした展開が多かったのも評価点だった。特にジェラミーは語り部という役所を活かして劇中内でのナレーション役も務めるというメタなロールもあり、人間とバグナラクのハーフという設定を活かした展開がとても多い。

喰えない性格を活かして立場を二転三転させる千両役者のカグラギ、血気盛んながら最大の頭脳担当のヤンマ、大胆不敵な強さを見せつけるヒメノ、質実剛健、冷静沈着なキャラながら内に秘めた情熱を時に見せるリタ。

そして主人公のギラは不条理に抗い続ける、徹頭徹尾「反逆」のキャラだった。これらのやりとりが作中内で常に魅力的であり、1年番組のテンションを保った所は大森作品らしさと言える。

エピソードの振り幅も、戦隊特有のカヲス回的なテイストもあれば、37話のように先代国王・イロキとカグラギの国を守る為に泥を被る大河ドラマのような重厚な回もあり様々。

ラクレスの本当の想いが発覚する41・42話辺りからの怒涛さは凄い。個人的には46話がベストエピソードで、「死」を語りながら永遠の命を否定し、終わりをいつか迎えるからこそ、今を生きようとする生の輝きを肯定したあの回が強烈に刺さった。

ハッピーエンドを諦めないというジェラミーのナレーションと共に幕を閉じた本作。製作に関わった人々、全てのキングオージャーのファンの物語が、それぞれの中で輝き続けて欲しい…そんな想いにさせられる名作でした。
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