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鈴木先生のtanigooのレビュー・感想・評価

鈴木先生(2011年製作のドラマ)
4.0
5/1 視聴
シンプルでいて小業の利いた演出、説明だらけで不自然だからこそ面白い台本、拙いところもあるけどリアリティのある生徒のキャスティング、いい作品。
生徒は自己弁護し、他人を攻撃し、ヒステリックになり、人の剥き出しの性を青いままぶつけてくる。そのどれもを鈴木先生は否定しない。ただ問う「本当にそうか?」と。固定するな、思い込むな、常に自分で思考し、他者の意見に耳を傾けろ。
理論と説明の台詞を、相手に、私達に伝わるように真芯で語る鈴木先生の姿は、高貴で静謐でありながら狂信者のようでもある。物事を追及することは正気や常識と云われるものを越えるものだから。鈴木先生も自己の境界線に悩む。
映画版はその境界線を如何に保つかの話。ドラマ版はどう思考し構築してきたかの話。
ドラマ版の最終話は今までの教育ぶった作品を軽く越える内容だった。多様性、主義と寛容。
境界線をどう引くか、選ぶかが正に人生そのものであり、それ事態もしなやかで流動的であるべきだと考えさせられた。

しかし、長谷川博己さん以外にはもう考えられないほどのハマり役を初主演にして手にしていることの凄み…!(出世作のセカンドバージン(助演)もそうだが)
私にとって長谷川博己という俳優は、地味ではないけれど王道のなかに紛れた異質で、正統派に擬態している異様にユニークな存在、と感じているけれど、こうやって作品や歩みを観てくると、スターなんだなぁ、と改めて思った。
大河主演の記事で「国民的俳優」と書かれていた時には異様な心地悪さがあったものだけど。
何となく、ご本人も大きな振り幅を持って留まる事なく異質であることを楽しんでいるのではないかな、と感じてるけれど、果たしてどうだろうか。
転けたり抱きつく時に異様に面白いニュアンスをこそっと入れ込んでくるから。

あと、やたら可愛くないか、鈴木先生よ、な作品。
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