Amber

だが、情熱はあるのAmberのレビュー・感想・評価

だが、情熱はある(2023年製作のドラマ)
4.1
山里亮太(森本慎太郎)と若林正恭(髙橋海人)半生を描くドラマ。

人生が楽しくなかった二人が、「なにものかになりたい」と思って目指したお笑い芸人になるという道。
必死に相方を見つけ、ようやくコンビを組んだはいいが、芽が出ない苦しい時期の葛藤。ネタを作っているのが自分であるが故の、何もしてくれない相方への不満。それでも、ネタが受けた時、なにものにも替え難い充実感を感じる。

そしてプロデューサー島(薬師丸ひろ子)によって二人は『たりない二人』として漫才をすることに。
今までネタを作ってきた二人だからこそ、相手がネタを一緒に考えてくれる喜びを知り、同時に、一緒に漫才をすることで何かが足りていない自分たちが更に浮き彫りになる。

先輩芸人タニショー(藤井隆)がことあるごとに若林に問いかける。「今、幸せ?」と。
その度、若林は自分を見つめる。
そしておそらく、ここで視聴者も自分を見つめる。

山里はネタをひたすらノートに書き続ける。腹が立ったこと、悔しかったこと、恨みつらみも嫉妬もノートに書き続ける。
その悔しさから色々学んで取り入れて、山里は泥臭く進化していく。こんなに自分の中の醜いと思われる感情を曝け出して、自分と向き合うのは、しんどい。けれど当時の山里にはそれしかできなかったのだろう。本当に自分と向き合えた人は、そのあと強くなると思う。

山里を演じる森本慎太郎は、自身のラジオで『元々嫉妬という感情を感じたことがなかったが、この役に入り込むようになって、その感情を知った』と語っている。おそらく彼は今まで嫉妬という感情を自覚する場面がなかったのだろうと思うが、自身の中の色々な感情を山里を演じることによりラベリングできたことにより、役者としての彼の技量が更に上がったのではないだろうか。

うまくいかないことだらけでも、自分には漫才しかなくて、それにかける情熱だけはある、というこの状況は、何かに情熱をかけている、もしくはかけたことのある全ての人への応援でもあると思う。

たりない二人の解散ライブの最後とセリフ、『ああ、たりなくてよかった』

ついつい、ないものねだりをしてしまうけど、たりないから、いろんなことに気づける。思わぬ仲間が見つかる。感謝もできる。
そして、なにものかになれたかどうかは、まだわからない。

そしてみんな、人生「こっから」だ。
Amber

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