キラリ

あなたがしてくれなくてものキラリのネタバレレビュー・内容・結末

あなたがしてくれなくても(2023年製作のドラマ)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

“夫婦だからって、わかるわけじゃねえからな。わかろうとするから、夫婦でいれんのよ。”

主要登場人物4人の綿密に練られた人物設定と繊細で細やかな心理描写、そして何より「セックスレス」というセンセーショナルな題材が魅力であるドラマ『あなたがしてくれなくても』。

まず、最初に私は原作マンガ愛読者です。ドラマは、単なる不倫作品ではなく、夫婦間に生まれるズレを「セックスレス問題」を切り口に巧みに表現したストーリー展開や絶妙なキャスティングが素晴らしかった。奈緒・永山瑛太・岩田剛典・田中みな実って配役考えた人すごい。この4人だから生々しさが倍増したと思っている。次回予告の緊迫感といい、思わず次回が気になってしまうエンディングといい、久しぶりにドラマらしいドラマを観たなぁと毎回楽しみにしていて、今期ダントツNo.1だと思っていたのですが、10話から徐々に雲行きが怪しくなっていき、最終回では「えっ…」って声が出てしまったほど、原作ファンなだけに色々思うことが多かったのが正直なところ。

①みちの選択
最後のシーン、あれって「みち陽ちゃん元サヤ」ってことで確定?それとも、みちと陽ちゃんはお互い未練があるものの最終的には別々の道を進むことを選び、あれは2人の記憶の中にあるもう二度と戻れないだろう幸せ絶頂だった頃の思い出シーンなのかな?どちらとも受け取れるし、どうなんだろう。ドラマや映画の結末として、その後の未来は視聴者の想像に委ねるというパターンは割と好き派なんだけど、もし今回のドラマの結末が前者なのだとしたら、それはそれで11話ずっと4人の行く末を見守ってきた視聴者を置いてけぼりにしている展開に思えて、「何も問題解決していない。結局ふりだしに戻ってるじゃん。」と納得がいかないかな。「みち陽ちゃん元サヤエンド」自体がダメなのではなくて、そこを落としどころにするなら、みちがなぜ最終的に元サヤを選択したのか?そこに至った心理描写をしっかり加えてほしかった。離婚の決定打となった子供を持つ持たないの価値観のズレは結局どう折り合いつけたの?キャリアアップすることで吹っ切れた?そもそも、10話でみちはあれほど思わせぶりな態度をとっておきながら最終的に新名さんを振るに至った経緯や内面描写も曖昧だし、序盤から9話まで主要登場人物の繊細な心理描写を丁寧に積み重ねていただけに、クライマックスでみちの内面がよくわからないまま一気にラストに向かっていってしまったのが謎。ラスト2話駆け足になってしまったのか、脚本家が違うのか?奈緒の演技がめちゃくちゃ良くて途中まで感情移入しまくっていたので本当に残念だし、結局みちの印象が最悪のまま終わってしまって奈緒が不憫でならなかった。あれじゃあ、観てるほうとしては「悪気なく新名夫婦の関係をぶち壊して、自分も一度は自立しようと思ったけどやっぱり一人は寂しいし、元夫の許せなかった部分も結局なかったことにして、惚れた弱みで“あなたがしてくれなくても、やっぱり一緒にいたい”」って印象になっちゃうじゃん。それとも「陽ちゃんは最低。みちも結局最低。似た者同士お似合い夫婦。」ってことなのかな・・・

②新名さんのキャラ変
ラスト2話新名さんの妙なキャラ変に戸惑ってしまった。もとから蘊蓄多くて少し面倒くさいし、社内でみちと見つめ合ったり脇甘すぎだとは思っていたけど、最後の方急にストーカー化していたり、コイントスしていたり、元妻である楓の目の前でデリカシーなくみちに思いの丈をぶつけいたり…えっ?「恋は盲目」ってこと?ラストにかけて、ここが強烈な違和感として残ってしまった。これまた新名さんが不憫でならない。

色々長く書いてしまったが、全体的にマンガにはないオリジナル脚本の部分に対してモヤっとくるところが多かったかも。マンガはまだ完結していないし、マンガとドラマで設定や展開も変更している部分が多いので、仕方がないんだけど。来週は特別編があるみたいだし、その中でみちの内面にまで深く切り込んでくれることを期待したい。
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