夏藤涼太

彼女たちの犯罪の夏藤涼太のレビュー・感想・評価

彼女たちの犯罪(2023年製作のドラマ)
4.3
#1話
キャストも構成も演出もなかなかよく、面白い1話だったんだが……全然話題になってなくて残念。
まぁ今期のミステリ・サスペンス枠は #ハヤブサ消防団 と #VIVANT が完全に持っていっちまったか…

しかし #かしましめし に続いて、前田敦子、すっかりしっとりとした"女優"の趣きを醸し出しておられるな…

#6話
クソ面白い。何が凄いって、原作にないオリジナル要素がさらに物語を面白くしてるところが凄い。あとは破綻せずに完結してくれれば文句なし。
今期のミステリ&サスペンス枠としてはVIVANTとハヤブサ消防団が話題だけど、本作が一番続きが気になるわ

#8話
映像ならではの叙述トリックが満載で面白い。VIVANTもハヤブサ消防団も衝撃の謎解きパートに入ってるが、ミステリーとしては本作が今期一番出来いいわ。
つーか前田敦子、演技うめえな…

#9話
回を追うごとに面白くなるの本当すごいわ。最終話、予告だけで泣いちまったよ…
女性陣みんな幸せになって欲しいのに、「絶望の幕開け」が不穏すぎる……まぁ理子に関してはマジで生きても地獄、死んでも地獄だからな……
智明、頼むから理子の癌を治した後にすべての罪を被って死んでくれ

最終話次第では、今期1どころか年間トップ狙えるポテンシャルだと思うので、期待してます
地味に主題歌がめちゃくちゃ本編に合ってるのもいい。こんなに出来いいのに、話題になってないの本能惜しいわ

#10話(最終話)
(まだ『何曜日に生まれたの』が数話残ってるとはいえ)ドラマ・アニメ含めて今期ナンバーワン作品でした。それどころか(ないとは思うが)大奥2期がコケたら今年トップを狙えるほどの傑作

昼ドラみたいな1話から、ハラハラドキドキの倒叙サスペンスに、二転三転のどんでん返しミステリー、さらには家族愛・シスターフッド・同性愛・無戸籍・性的同意・女性の生きづらさ・レーゾンデートル・罪と罰等々、様々な人間ドラマや社会的テーマ、哲学を抱えたドラマになるとは、いったい誰が予想しただろうか

かなりつらい結末ではあったが、繭美と理子、あいと義母、そして理子・大輔・翠と、複雑な形での様々な愛が描かれたのが救いで、最終話は何度も涙した
なにより、昨今増え続けている安易な復讐ドラマ、やり直し系物語、時代に逆行するような勧善懲悪ものにバックドロップをキメるような、スタッフの主役たちの描き方に痺れざるを得ない。
またそれらの伏線が、理子から上原への塩対応や義母の言動等、序盤からバッチリ描かれていたことにビビるよね

#ハヤブサ消防団 と #彼女たちの犯罪 はどちらもミステリー小説を原作にしながら大胆なオリジナル展開・設定を加えたドラマだが、その試みは、本作の方が数段上手くいっていたように思う。

「普通ではない人」はどうすれば「普通の幸せ」を手に入れられるのか?
そのために犯罪を犯すことは、罪なのか?

ドラマ版はこのあたりをテーマに、大胆な設定や展開の変更を行っているよね。ドラマスタッフ凄い

さらに主演4人が元AKB、元乃木坂、元E-girls、現役ドラマーという、一見不安になりそうなキャスティングでありながら、全員バッチリな演技で魅せてくれたことに驚き
特に前田敦子の幸薄・ダークな演技には目を見張るものがあるし(ラストのスッキリした顔も凄い)、ほないこかのナレーションも雰囲気たっぷり。もちろん、野間口徹の名バイプレーヤーっぷりと、毎熊克哉の(無駄な焼け具合と)名クズ男っぷりも忘れてはならない

Omoinotakeの主題歌も悲壮感を盛り上げてくれ、音楽や映像の雰囲気も、バッチリだったし、まぁドラマに関わった人全員がいい仕事してる。だいたいどこかに不満があるものなのに、これは凄いことだよ

しいて不満を言うなら、序盤のヒキが弱いことと、最終話が拡大じゃなかったことか。
とはいえ1話が面白くて終盤つまらないよりは尻上がりに面白い方が見る側としては絶対いいし、深夜帯じゃなかったらここまでの盛り込みっぷりは無理だったろうから、これでいいのだろう
結末は駆け足とはいえ、オチを想像させるに十分な描写はしてあったから
(智明は殺人未遂で現行犯逮捕、理子は被疑者死亡で不起訴→大輔は加害者家族にはならず、翠は執行猶予で(再婚もして?)大輔の養育里親に…と)

しかし、服役後の繭美とあいの後日談があったら、Huluに入っちゃってたよ…危ない危ない
夏藤涼太

夏藤涼太