NicoJay

悔い改めたスパイ シーズン1のNicoJayのネタバレレビュー・内容・結末

悔い改めたスパイ シーズン1(2022年製作のドラマ)
1.9

このレビューはネタバレを含みます

日本人には馴染みのないアルゼンチン共和国。
南米大陸の南端にある、日本の7倍強の面積を持つ国です(人口は日本の1/3ほど。地理的に南極の一部に対して領有権を主張)。

物語は1985年、アルゼンチン連邦警察の若き諜報員(主人公ホセ・ペレス/イオシ)が、ユダヤ人コミュニティに潜入する使命を与えられるところから始まります。
なぜそんなことをするかというと、経済的にユダヤ系の力が強いため、アルゼンチン社会の反ユダヤ感情が根強いというのがひとつ。
もうひとつは19世紀に遡り、ユダヤ人がパレスチナ・アルゼンチン・ウガンダのいずれかに建国するというアンディニア計画。

最終的にユダヤ人国家はパレスチナに建国されましたが、南米で随一、世界でも7番目にユダヤ人口の多いアルゼンチンでは、ユダヤ人が第2のイスラエルをアルゼンチンのパタゴニアで建国するのではないか(そのために土地を買い漁っている?)という噂が絶えません。

そこで、上記の潜入作戦で情報を収集するというのが物語の主軸。
しかしながらこの物語は、ユダヤ人が何をしようとしているのかは二の次で、特に軍部で根強いとされるアルゼンチンの反ユダヤ主義を描いているような気がします。

米・中・露・英あたりが絡むスパイ合戦ならわれわれにも馴染みがあり、たいてい西側諸国が正義として描かれ分かりやすい。
一方、アルゼンチンが国内マイノリティのユダヤ人を警戒するというのは、日本人からするとちょっと掴みどころがありません。
また、各話中で1980年代、1990年代、2000年代を行ったり来たりするのも、アルゼンチン現代史に疎いと何がなにやら…。

1992年にブエノスアイレスでイスラエル大使館が爆破されたテロ事件と、1994年に同じくブエノスアイレスにあるイスラエル相互協会(AMIA)本部ビルが爆破されたテロ事件に関する予備知識。
および、アルゼンチン国立ブエノスアイレス大学客員研究員として現代ユダヤ社会の研究を行ってきた宇田川彩氏の著書『それでもなおユダヤ人であることーブエノスアイレスに生きる〈記憶の民〉』などを読んでから鑑賞すると、ユダヤ人社会に浸透していき情報収集する主人公のスパイ活動のみならず、物語の背景まで理解できてより楽しめるのではないかと思います。

そこまで興味を持てない人には、ちょっと辛いかなと。
NicoJay

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