TenKasS

フォールアウトのTenKasSのネタバレレビュー・内容・結末

フォールアウト(2024年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

欺瞞に満ちた優生思想の口当たりのいいところだけを集めたVault-Tecの理想主義を疑いもなく吸収した主人公ルーシーの純朴さを、エラ・パーネルの透き通った大きな眼に託すキャスティングの間違いのなさがすごく良い。その目が地上に出て様々なものを見るにつれて懐疑的になり、濁り汚れ血に塗れ、涙を流すまでの自己同一性の揺らぎ。ついでに引き金を引く指が他人のものになる。
資本主義大国の際限のない利益追求とそれに対する揺らぎのない信念。それらを盛大に皮肉る原作ゲームから連なる精神性はちゃんと自己批判的に映像化されている。『エイリアン』のころから続くSFの系譜にも見える。
並行して描かれる時折見せるアホヅラが大変印象的なアーロン・モーテンのBOSのストーリーラインはパワーアーマーをアメリカのマチズモの象徴とし、そこへの憧れをどんどん皮肉っていく。
元映画スターというキャラが出てくるのも必然的という感じ。こういったアメリカ的なものを喧伝するアメリカ映画界の側面の一つとして出てきている。反共とそのコマーシャルに加担したものとして出てくるのも面白かった。
映っているものが全てゲームそのままで原作ゲームファンだけに奉仕するものと思いきや、ちゃんと様々なコンテクストを巡らしているように見える。多分もっとアメリカに詳しい人が観たら色々わかるはず。
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