このレビューはネタバレを含みます
「想像力」というテーマがお話の面でも演出の面でも遺憾なく発揮されていたと思います。
まず、演出の面では、特撮結構見てるくせにあんまり詳しくない自分みたいな素人でも印象に残るような特技効果が多く使われていて、制作陣の想像力の豊かさを感じました。特に最初の3話はそれが顕著で、ワクワクしました。
次に、お話の面では、「想像力」に3つの意味合いがあったと思います。
まずは、ユウマがアークや武器を作り出したという「空想力」。これが触れ込みの段階で多くの視聴者が想定していたニュアンスだったと思いますし、実際、怪獣との戦闘では、この空想力で多くの逆境を跳ね返しました。惜しいのは、ユウマが特にこの空想力に秀でていたようには見えなかったこと。スケッチブックに架空のヒーローや武器を描くなんて僕でもやっていたことですし、戦闘中の奇策はユウマではなくアークの発案であるように描かれていましたし。もうちょっとユウマが平素から空想力に豊かであるという場面を見せてもらえていれば、最終回ももっと盛り上がったのかなと思います。
2つ目のニュアンスが、「共感力」です。これはクロコ星人の扱いを巡ってユウマとシュウが対立した時に現れました。シュウは防衛隊出身らしくクロコ星人を脅威として排除しようとしますが、ユウマは友好的な関係構築を目指します。自分ではない他者の気持ちを慮り、寄り添う力。これは特に現代で求められる意味合いでの想像力です。これに関しては、ユウマが共感力に豊かであるという描写はたくさんありました(特に第7、10~12話)。そもそも、ルティオンが地球にやって来たのも、自分たちの銀河を救うために他の銀河に暮らす生物を犠牲にしても良いのかという共感力の発露故でした。
3つ目のニュアンスが、「発想力」です。これは、主に怪獣を倒す以外に出来ることはないかとユウマが考えることでよく現れていました。このニュアンスの「想像力」をちゃんと描いたことで、主人公の職業を、脅威の即時撃滅を是とする防衛隊の隊員ではなく、あくまで学術的に怪獣を分析して対処法を捻り出すSKIPの所員としたことの意味が生きていました。
このように、本作は「想像力」という象徴的なワードを軸に見事に組み立てられた良作だったと思います。ただ、キャラの魅力が弱かったのが残念。特にキャラが皆んな大好きだった前作と比べると、SKIPの面々の挙動がテンプレ的すぎて、あまり印象に残りませんでした。