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THE PENGUINーザ・ペンギンーのfujisanのレビュー・感想・評価

THE PENGUINーザ・ペンギンー(2024年製作のドラマ)
3.7
映画「THE BATMAN」の世界観を引き継ぐ、重厚なスピンオフドラマ

2022年の映画の世界観をそのままに、同作で登場したペンギンを主人公として作られた全8話のスピンオフドラマシリーズ。映画でも小物のチンピラとして描かれていたペンギンが主人公で大丈夫?と思いきや、親子愛や師弟愛を織り込んだマフィアものとして、見ごたえのあるドラマシリーズでした。


■ THE BATMANの世界観
映画では終盤、ペンギンがゴッサム・シティを窓越しに眺めるシーンがあるのですが、ドラマはそこからそのまま繋がる感じでスタート。映画の1週間後とのことですが、まさに、映画からそのまま繋がるように始まりました。

映画は当時、真っ暗な映像で話題になりましたが、マット・リーヴス監督自身がドラマの製作総指揮も努め、ドラマ撮影用の機材も映画のものと同じにしてあるとのことで、漆黒の闇に蠢くような映像も同じ。ただ、今回は昼間のシーンも多いので良かったです。

ドラマが描く時系列は、映画「THE BATMAN」の1週間後から、2026年公開予定の「THE BATMAN 2」までの間。一作目で死んだマフィアのトップ、カーマイン・ファルコーネの死によって起こるマフィアの権力闘争が描かれています。


■ ペンギン
映画のペンギンは、コミック原作通り、カーマイン・ファルコーネの元でナイトクラブ 『アイスバーグ・ラウンジ』のオーナーをしており、映画ではバットマンに追い回された上に殺されかけた小悪党で、そんな小物感は、ドラマでも同じ。

映画、ドラマともに演じるのはコリン・ファレル。「ロブスター」や「イニシェリン島の精霊」などの姿からは想像できない顔や姿で話題に。ちなみに、吹き替えも、映画・ドラマともに金田明夫さんで、素晴らしい声をあてておられるので、吹き替えがおすすめです。

ちなみに、真っ暗な映画なので色は殆ど分かりませんが、映画でも紫の車に乗ってます。。


■ ドラマシリーズの感想
スルーする予定が、面白いと絶賛されているので見始めたドラマシリーズでしたが、確かに、ペンギンというキャラクターがドラマにマッチしていました。

バットマンの敵役の中でもペンギンってちょっと変わったキャラクターで、狂った悪党というよりも悲哀に満ちた普通の人間。幼少期に貧困の中で虐待を受けたことで、屈折した憎悪を持つ悪役ですが、ナイトクラブが経営できるほど、普通にそこそこ頭の良い人間で、リドラーやジョーカーのような狂人ではありません。

それゆえに、あまり人気がない地味なキャラクターなのですが、長い話数で心理描写をじっくり描くドラマシリーズには合っていたと思います。

□ バットマン、ではなくマフィアもの
ドラマの冒頭で映画終盤の洪水シーンが流れるぐらいなので、映画は見ておいたほうが楽しめると思います。

ただ、内容は「ゴッドファーザー」や、マーチン・スコセッシの「グッドフェローズ」、ドラマの脚本家ルフランも、デ・パルマの映画「スカーフェイス」のような物語、と言っているぐらいのマフィアものなので、バットマンっぽくはなかったですね。

バットマンがでてきて、キャット・ウーマンが出てきて、リドラーやジョーカー(バリー・コーガン)の話も出てきて~みたいなのを期待すると期待はずれかも。ドラマでも後半にド派手な爆発、街崩壊シーンがあるのですが、なんでバットマンは何もしないんだろうとか、ちょいちょい気になってしまいました。

いちおう、ドラマの終盤では、セリーナ・カイル(キャット・ウーマン)から手紙が来るシーンがあったので、そこから映画のパート2につなげるのかもしれません。(ドラマが高評価だったみたいなのでシーズン2なのかな?)


ということで、面白かったものの、バットマン味は薄かったドラマでした。各エピソードの感想は、エピソードコメントの方に書いています。
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