またHBOが莫大な制作費を投じて（たぶん）壮大なSFドラマを作り上げちゃっています。同じHBOの『ウエストワールド』（'16〜'22）や『レイズド・バイ・ウルブス』（'20〜'22）のように打ち切りにならなければいいのですが……と少し警戒しつつ鑑賞。まずはシーズン1。

映画『デューン 砂の惑星』シリーズ（'20〜）の前日譚とはいえ、物語の舞台はポール・アトレイデス誕生の約10,000年前。もはや歴史の彼方に埋もれた時代とも言えるほど年月を遡った物語ですが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ版と共通する世界観やデザインが随所に感じられるのは嬉しい驚きでした。

物語的には、SFの世界で繰り広げられる中世ヨーロッパ的な貴族闘争と陰謀の物語。『ゲーム・オブ・スローンズ』（'11〜'19）のSF版という表現もしっくりきます。

ベネ・ゲセリットという女性中心の秘密結社が、帝国内の複数の勢力に対して巧みに影響力を行使し、裏切りと策謀が渦巻く中で自らの計画を推し進めていく……というストーリー。

砂虫（サンドワーム）の巨大な口や歯の形状、人を操る声（The Voice）の演出、ベネ・ゲセリットの秘密の合図（手話）、体のバリア（シールド技術）などは、ヴィルヌーヴ版の美学や演出を忠実に踏襲しているように見えます。安藤忠雄が設計したような無機質なコンクリートの塊のような、ミニマルで重厚なデザインもそうでした。

登場人物も多く、貴族や秘密結社の思惑が複雑に絡み合うため、序盤は少し混乱するかもしれません（混乱しました）。

ただ、ドゥニ・ヴィルヌーヴが作り上げた世界観に浸りつつ、来る『デューン 砂の惑星 パート3』への理解を深めるための良い予習になりそう。

ついでにいうと「思考機械」や「禁じられた技術」などの未来の物語なのに古めかしい言葉が、グッと世界観を深めてくれている気がします。

今後の伏線となりそうな謎が多く、シーズン2に期待が膨らみます。

《 用語メモ 》

・惑星アラキス：デューンまたは砂の惑星。
・アトレイデス家、ハルコンネン家：帝国内の有力な家門（敵対関係）。
・ベネ・ゲセリット：女性中心の秘密結社。
・ヴァリア・ハルコンネン：本作の主人公。
・デズモンド・ハート：惑星アラキスからやってきた謎の兵士。
・シャイ＝フルド：惑星アラキスに生息する砂虫の別名。

• #ドゥニ・ヴィルヌーヴにハマる

『デューン 砂の惑星』のスピンオフドラマ。映画の1万年前を舞台にベネ・ゲセリット設立を描く。

一話一話がひどく鈍重で進みが遅い。キャラクターにも魅力がなく、大半が暗い画面なので非常に見づらい。

端的に言って面白くない。エミリー・ワトソンらキャスト陣は好演しているがいかんせん演出にメリハリがない。

映画版と同じく世界観はすごくいいだけに残念。予算もかなりかかっていて賞レースも見据えて作られただろうがこれでは厳しいのではないだろうか。技術方面のノミネートは見込めるかもしれないが…

主人公であるヴァリア・ハルコンネンに魅力が乏しいのが最大の問題点。かなりえげつない方法で修道会を導くので共感が出来ないし、何を考えているのか終始分からないので感情移入できない。

終わり方的に次のシーズンは恐らくつくられるのだろうが、鈍重でメリハリのない演出をどうにかして欲しい。期待のドラマだっただけに残念。

壮大なデューンユニバースを拡張する、圧巻の前日譚。来る「デューンPart3」はポール・アトレイデスの英雄譚に疑義を投げ掛ける物語になると思われるが、血に塗れた闘争の歴史を語る本作は、横暴と偽善に満ちた権力者の爛れた本質性を真っ向から描写し、デューン世界の解像度を格段に上げてくれる。

本編の静謐な空気感や哲学的な物語に比べると臨場感や過激描写に富んだドラマ性は強く、そこはTVシリーズゆえの強みを活かしていて、これはこれでアリ。言われ尽くしてるだろうけど、デューン版「ゲースロ」。勢力図を脳内で描くのが楽しいし、エグい。

続編製作決定済ということで、さらなるデューン世界の拡大に期待大！