13歳の少年が犯罪を犯した理由とは？

海外でランキングトップを独占

配信開始直後から世界的な話題を呼び、Netflix英語シリーズのグローバルランキングで1位を獲得
リミテッド・シリーズとしては史上最多の視聴記録を打ち立て、配信開始4日間で2430万回再生、2週目までに累計6630万回に達した

革命的な撮影技術

これは自分たちの物語かもしれないと問いかける作品。



■13歳のジェイミーがクラスメイト殺害容疑で突然逮捕される。 ごく平凡な家族の幸せが、一瞬で悪夢に変わる。
本作『アドレセンス』（原題: The Beautiful Game）は、その名の通り「思春期」に潜む光と闇を鮮烈に描き出すNetflixの4話構成リミテッドシリーズ。13歳の少年ジェイミーがクラスメイト殺害の容疑者として逮捕される衝撃的な幕開けから物語は始まり、家族と社会の運命が慟哭するように交錯していく。

■視聴者の中でワンカットで撮影していると気づかないところが何より凄い。

■映像関係者からすると機材含め、それで撮影したのか?!という驚きしかないし、撮影技術のレベルの高さに舌を巻く。
何より若いキャストを多く起用したシーンが詰まっているストーリーの中で、この撮影方法に挑んだ演出家やプロデューサーは野心的で、チャレンジング。


■未成年者の犯罪は日本人からすると、先が読める展開ではあるが、海外では真新しいもの。
ここはおさえておくべき。

昨今の未成年者の犯罪は増え、いまだに加害者側の親の気持ちを理解することは困難。
成人の犯罪であれば親兄弟姉妹は関係ないと思えるふしがあるが、未成年者の犯罪となると、やはり家族の責任が問われる。生まれ育った環境は切っても切り離せない。
しかし、親であれ我が子が何を考えているか本当に理解することは不可能。
しかし、そう言えないことが未成年者の犯罪の難しい問題。


■作品の概要とテーマ
「もし我が子が加害者になったら」という悪夢。
物語の骨子は「もし自分の子どもが恐ろしい罪に問われたらどうするか？」という究極の問いにある。
ジェイミーの一家はどこにでもいるような普通の家庭。成績優秀で賢い息子が、ある朝突然警察に連行される。
現実なら誰もが卒倒しそうなこの事態に、父エディは混乱し、「何かの間違いだ」と信じたい気持ちと、沸き起こる不安に引き裂かれる。
劇中でジェイミーは「虐待や家庭内の不幸の産物ではない」と明言されており、物語は犯人探しではなく「なぜ彼がそんな凶行に及んだのか」という動機の解明に焦点を当てる。
そこには昨今社会問題となっているオンライン上の「有害な男らしさ（マノスフィア）」やいじめ、インセル文化の暗い影が横たわる。
大人には見えないネットの深淵で、孤独な少年が何を見て何を信じてしまったのか。
作品は安易に「親のせい」にせず、家庭と社会の双方に鋭いメスを入れる社会派ドラマになっている。

■映像技法とワンカット演出の革新性
本作最大の特徴は、全てのエピソードがワンカット（長回し）で撮影されていることだ。
カメラは一度も止まらず、登場人物たちの運命の瞬間瞬間を生々しく追い続ける。
この大胆な手法によって、視聴者は圧倒的没入感と緊張感を味わう。(※視聴環境が重要)
警察が自宅に雪崩れ込む冒頭から、取り調べ室や家庭内の対峙、心理士との面談シーンに至るまで、一秒一秒がリアルタイムで進行し、現実そのものの息苦しさが画面越しに伝わってくる。
役者陣にとってもこの手法は極限の挑戦であり、撮影前に徹底的なリハーサルを重ね、一日にテイクは2回が限界だったという。
エリン・ドハーティ（臨床心理士ブリオニー役）は「ひとたびカメラが回ったら、ジェットコースターに飛び乗ったようなもの。途中下車はできない」と語っている。
その甲斐あって映像は信じられないほどスムーズで躍動感に満ち、観る者は物語の現場に居合わせているかの錯覚に陥る。
この技法は専門家からも高く評価され、各国の批評家が「近年まれに見るテレビドラマの完璧さだ」と絶賛するほどの出来栄えを生み出している。
批評面でも評価は極めて高く、英国『ガーディアン』紙のレビューでは「何十年に一度のテレビ史上の奇跡」とまで評され、「息をのむ演技と魂を揺さぶる問いかけが見る者の心に深く残る」と絶賛されている。
各種メディアが挙って満点に近いスコアを与え、「近年これほど完璧に近いドラマはない」との声も上がった。
またテーマの社会性も大きな反響を呼び、英国ではこのドラマをきっかけにインセル文化やオンライン上のいじめについて議会で議論が行われるまでに至った。
制作陣は国会に招かれてオンライン上の安全について意見を述べ、英国首相すら作品を支持したという。
世界中の視聴者がこの物語に衝撃を受け、「自分たちの子どもと初めて真剣に性やネットの話をした」という声も寄せられており、単なるドラマの枠を超えて社会に問いを投げかける現象となっている。

全4話の中でも、もっとも圧倒的だと評判なのが第3話「心理面談」の回だ。
このエピソードでは物語の舞台が取り調べ室から一転、ジェイミーと臨床心理士ブリオニーの一対一の対話劇に絞られる。
わずかな部屋の空気の揺れまで映し出す緊張感の中、冷静沈着な心理士ブリオニーが、頑なに心を閉ざす少年の心に少しずつ踏み込んでいく。二人の静かな攻防は、まるで張り詰めた糸がはじける瞬間を待つかのような緊迫感。
ブリオニーの問いかけは徐々に鋭さを増し、ジェイミーの中に潜む本音と、彼自身も自覚していない危うい信念を暴いていく。
この心理戦は、視聴者としても息ができないほどの圧巻のシーン。
演じるオーウェン・クーパー（ジェイミー役）は当時15歳、本作が演技初挑戦にもかかわらず、無垢な少年の顔と急速に増殖する憎悪を併せ持つ難役を見事に体現してみせた。
一見おどおどした普通の少年が内に秘めた狂気を覗かせる瞬間、その怪演ぶりに思わずゾクッとするほどで、本当にこれがデビュー作なのかと戦慄する。

最終話の第4話では、事件から1年後、バラバラになりかけた家族が必死に繋がろうともがく姿が描かれる。ジェイミーが逮捕時に「付添人」として選んだのは父だったが、その選択が意味するものが最後に重くのしかかる。
第1話で見せた父の必死の擁護と信頼は、裁判を経て底知れない悲しみに塗り替えられていく。それでもなお、残された家族は愛する息子と向き合おうともがく。
その姿は痛々しくも尊く、視聴者の胸に深い余韻を残す。
物語は決して安易な答えや救いを提示しない。最後まで

「なぜこの子が殺人犯になってしまったのか？」

という問いに対して、決定的な答えは示されず、観る者は宙ぶらりんの問いを突きつけられる。
しかしそれこそがリアルであり、安直な理由づけを排除した点に本作の勇気と誠実さがある。
両親に虐待されたわけでも、特別不幸な境遇だったわけでもない少年がなぜ殺人に至ったのか？
その問いは現実社会にも通じる普遍的な問題提起だ。
ラストシーンでは、父を演じたスティーヴン・グレアムが「あの結末には詩がある」と語ったように、静かながら魂を揺さぶる締めくくりが待っている。

これは自分たちの物語かもしれない

そう思わせるリアリティが海外での評価に繋がっていると考えられる。
劇中のジェイミーの一家はごく普通の中流家庭であり、彼らに起きた悲劇は決して遠い世界の出来事ではない。
子を持つ視聴者であれば、「自分の子育ては大丈夫だろうか？」、「もしわが子が同じ目に遭ったら」と不安に駆られる。
実際ジェイミーの両親も「息子が自室にいれば安全だと思っていた」と語り、息子がネットで何を見ていたか把握できていなかったことを後悔する。
だが現代社会において、親が子どものネット世界すべてを管理するのは不可能であり、それを強行すればそれで親子関係が壊れてしまう危うさもはらんでいる。
SNS時代の子育ての難しさと、そこに付け入る闇（ネット上の過激思想やいじめ）の存在を、本作はこれ以上ないほど突きつけてくる。無力感に打ちひしがれる両親の姿は、観ているこちらの心まで砕けそうになる。

そして何よりも痛ましいのは、愛する息子が「加害者」という取り返しのつかない存在になってしまうことだ。

被害者家族の悲しみは計り知れない。
しかし同時に、加害者を生んでしまった家族もまた地獄の苦しみを味わうのだという現実。
このドラマは決して被害者の存在を忘れず描きつつ 、加害者家族の絶望と愛情にも深く寄り添う。善悪だけでは割り切れない人間模様に胸が締め付けられ、「こんな悲劇は二度とあってほしくない」と祈らずにいられない。

シンプルかつ大胆なテーマを、ある意味もっとも人間らしい撮影方法でつむいでいる。

https://www.redsharknews.com/the-pressure-of-shooting-netflixs-four-part-drama-adolescence-in-four-single-shots

これはなかなか重いけど、見応えがありました。いきなり長回しで始まる、容疑者の自宅に武装警察が突入する逮捕劇。確保された容疑者は、なんと13歳の少年。突然の出来事に慌てふためく父と母と姉。オープニングは、息を呑む展開で思わず画面に釘付けになってしまいました。

全4話で完結するミニシリーズのドラマです。同級生殺しの容疑者となった少年を、1話ずつ異なる角度から見つめていく構成。各エピソードはすべて長回しのワンカットで撮影されており、出演者と一緒に事件を追いかけているような臨場感を味わうことができます。

ワンカット演出も見応えがあり、屋内から屋外へとカメラが滑らかに移動し、シーンごとにメインキャストが自然に入れ替わっていく。さらにはカットなしで上空撮影まで織り交ぜるなど、撮影技術の高さに驚かされます。

そして何より、このワンカット演出の中での俳優たちの演技が素晴らしいのです。とくに容疑者の子役は、鬼気迫る表情と存在感で、物語の核心に鋭く迫っていました。

思春期という難しい時期にある少年が、友達や家族、異性との関係、そしてSNSという現代ならではの要因によって、極端にバランスを崩していく危うさを、さりげなく、しかし確かに描き出していた作品です。

学校内の様子も、一見すると普通に見えるのに崩壊寸前を思わせるセリフが先生たちからそれとなく聞こえてきます。先生たちも振り回され、授業もとりあえずビデオを流しておけばOK、という空気が漂っていました。SNSの影響が表面化しにくいという特性も、絶妙なリアリティで描かれていました。

ラストは意見が分かれるかもしれませんが、個人的には、なんともいえない余韻を残してくれて、いろいろと考えるきっかけにつながる結末だったと思います。

• #荒れるジュブナイルのリアリズム
• #4.5＝特に好き

やべぇよ、これは…。全てがやべぇけど、強いてあげるならスティーブン・グレアムがやべぇよ。4エピソードで多角的に描かれる事件と真相。本当面白かった。