トランティニャン

チェイス~国税査察官~のトランティニャンのレビュー・感想・評価

チェイス~国税査察官~(2010年製作のドラマ)
4.0

今からしてみたら、坂元裕二だと知らず観ていた。
巧妙な手口で脱税する輩を査察して取り締まるという単なるマルサものではない。国税査察官と天才脱税コンサルタントの対決を軸にしつつも、あくまで脱税を取り巻く人間たちの業を描いた重厚なドラマに仕上がっている。

フラッシュフォワードの意図的な挿入、仕事への没入、その代償としての家族の崩壊、リアルに描いているとみせかけて実はできすぎなくらい過剰に施している演出といった諸要素は、『ハゲタカ』『外事警察』などで散々使われてきたこともあってやや食傷気味。けれど、それら一つ一つのギミックは、人間の奥底を覗いてみたいというある種純粋な好奇心に基づいているからこちらも目が離せない。

脇を固める奥田瑛二、ARATA、麻生久美子という、普段あんまりドラマに出ない俳優をフル活用したキャスティングはやっぱりインパクトある。江口洋介は、信念を貫けば貫くほど、真相を追及すればするほど砂を噛むような事実にぶち当たり、孤独になり、正気を失っていくという、相変わらず愚直な役柄しか与えられてなくてややかわいそうではあるんだけども。 

もちろん、脱税の手口と、それを見破るマルサの息詰まる対決も面白い。ドラマでも分かりやすく説明してたけど、脱税の手口は大きく分けて2つ。収入を少なく申告する所得隠しと、架空の経費を計上して粗利を削る経費の水増し。いずれも普通の口座には置いておけない裏金が発生することになるので、マルサは脱税者の家をひっくり返さんばかりのガサ入れをすることになる。
ここまでは『マルサの女』にもある面白さなんだけど、そこにモダンな脱税・租税回避スキームが加わってくる。タックス・ヘイヴン、レベレッジドリース、イミテーションゴールド、パーマネント・トラベラーといった耳慣れないカタカナを、脱税コンサルタントが毎話紹介してくれる。