レインウォッチャー

ブレイキング・バッド SEASON 3のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

4.0
事態が複雑度を増していく一方、今シーズンではかつて「男の哀愁」と呼ばれたようなものが描かれる。ウォルターにハンク、ガスでさえもが、金を稼ぐという絶対的な行為の意味に囚われている。

昨今ではこのような男たるもの一家の大黒柱として…みたいな価値観への固執は悪しきものとして扱われる傾向があると思うけれど、実際今日や明日はそれが求められてるんだから仕方ないやんか、という嘆きが彼らの七転八倒から伝わってくるようだ。
どこまでが家族のためで、どこからがエゴなのか。キレイな金、汚い金を決めるのは手段なのか目的なのか。闘病生活が落ち着くや否やウォルターが悪人に見えてきてしまうことからも、自分がもつバイアスに気付かされたりする。

地味で話が進まないように見える10話のハエ退治回こそ間違いなく今シーズンの白眉。
ウォルターにまとわりつく妄執や罪悪感や…の象徴のようなハエを通して彼は自らと対話し、相棒ジェシーとの関係を棚卸しする。

また、ウォルターにとって、そしてこの作品にとって(メタ的な意味込みで)実は最大のヴィランといえそうな存在が覚醒する。ウォルターの妻スカイラーである。

リアルでもヘイトを一身に集めることになったらしい彼女、確かに納得のウザさであるのだけれど、このウザさの出所の一端は上記の「男たちの世界(笑)」を脇から阻んでくることへの潜在的な嫌悪感にあることは想像されるところだ。

因みにわたしは彼女のムーブがどうこうより、ストリップバーに棲息するペリカンみたいなのになぜかMILF扱いされてることに何より納得がいかない。