ClaudeFelix

ビカミング・ア・ゴッドのClaudeFelixのレビュー・感想・評価

ビカミング・ア・ゴッド(2019年製作のドラマ)
4.5
キルスティン・ダンストの熟女っぷりを堪能する為に作られたと言っても過言ではないマニア垂涎のブラックコメディ。
ジョージ・クルーニーが製作にクレジットされてるのも、いちいち面白い。
スプレーで固めたブリーチっぽい金髪をなびかせ、ピチT、ボディコン、ビキニ、レオタード、ホットパンツ、胸のあいたドレスに身を包む日焼けのムチムチバディ。そんな元ヤン風情が画面狭しと闊歩し、毒突き、呑み、踊り、ショットガンをブッ放しては金策に奔走する痛快ドラマ。
幼い子供を連れてレジャープールで働く様は、「ストレンジャー・シングス」を思い出したが、90年代の過剰さが更に秀でてか、フロリダの暑さが脳を湯掻く勢いでビビットかつ緩く湯加減も最高でありました。

(要注意★以下ネタバレあり)

こう言う怖いもの知らずの姉さん方、日本にもたくさんいたなぁ〜。
自分の高卒の従姉妹がまさにこの筋で、バイトで荒稼ぎしア●ウェイに心酔し米軍キャンプで遊んでのアメリカで結婚から離婚シングルマザー。その後、一念発起し事務員として成り上がった現状を知る身としては、ただただ天晴れ。内容どうあれ、あのバイタリティには敬服しますよ。
ちなみに従姉妹は、ア●ウェイ上位会員のお宅パーティーに呼ばれた際、無限に流れる音楽が有線放送と知るや感化され、そのモチベーションから親戚一同にサプリを売りまくってました。勧誘こそされなかったけど、怪しいと知りつつ買ってしまうのが親戚縁者の悲しい性。でも、カッコ良かったんだよなぁ、勢いがあって。クリスタルじゃないけど、身近にいると応援したくなるんですよ。

物語の印象としては、シングルマザーのマイルドヤンキーが、ネットワークビジネスの闇に斬り込んで行くかと思いきや、やる事なす事ブチ切れてはヤラかしの裏目つづき。その無軌道さに、ただただ唖然とし笑うばかり。ドキドキハラハラってよりは、またヤリやがった!(笑)って感じでした。
80年代の香残る90年代ファッションに音楽、自由主義経済をひた走るチープにしてギラギラのアメリカ。その後の狂想曲「サブプライムローン」へと突入する序曲として観るのもまた一興。「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や、「マネー・ショート」を前後で鑑賞すると物語の厚みが増すやも知れませんね。
以前、セミナー商法まがいの会社に一年ほど身を置いてた事を思い出すと、本当に安っぽくて、やり口は違えど雰囲気は似てますよ。社員もスタッフも会員も皆どうかしてて、今更のように笑えます。
たぶん、日本でも作れると思うな、これは。

最後は、シーズン2を匂わせつつハッピーエンドで、まあこれはこれで良いんじゃないかと。
打切りらしいけど、これ以上の山場は要らんやろ?って思う事から特に残念とも思いませんでした。

脇を固めるキャラクターも相当に濃くそれなりに笑えるんだけど、ただ思い返すと、キャラの背景が見えないか薄い気がします。
そもそも、シングスマザーとは言え引く手あまたの美熟女クリスタルが、まともに恋愛をしないのも謎だし、言い寄ってくるのが勘違いコーディだけってのも何やら解せない。そこが面白いとこでもあるんだけど。
ネットワークビジネスFAMにハマりまくった元アル中の旦那トラヴィス(元フットボール選手かなんか知らんが)のどこが良かったのかも謎。在庫を置かせてくれた歴史の元女教師とのエピソードでさえなんの洞察も発展もない。
その他にも…
副大統領と懇意にしてるコディの母、資金洗浄で服役中のコディの父、ビザ屋以前のアニーの病の元凶、教会の神父、語学学校の先生、性同一性障害とおぼしき息子ゴメス、オビーとブリッジズの関係と確執、プールを売った覗き魔オーナー詩人スタン、37周年番組の外で詩を読んでた女警備員、家族を取られ船を焼かれたジャド、ミルタの記者としての半端さ、ただ不気味で滑稽なだけの裸足のロジャー、アイソレーションタンク風味でメンタルケアするオビーの妻ルイーズ。…などなど、どれもこれも狂ってて愉快だけど、バックグラウンドが浅く、背景を垣間見れるシーンがほぼない。
それを知ったとこで、クリスタルのドタバタ劇がメイン故、人物背景などどうでも良かったのかも知れないけど。後半に近づくに連れ茶番が更に増し、風呂敷を広げてはご都合主義的に収めの繰り返しで、最後の展開は失速気味でありました。

とは言え快作なのは間違いないかなぁと。
普通に楽しかったしね。
キルスティン・ダンストンの今後にめちゃくちゃ期待したくなる作品でありました。
ClaudeFelix

ClaudeFelix