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獣になれない私たちの堊のレビュー・感想・評価

獣になれない私たち(2018年製作のドラマ)
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・「口頭で伝えるほうが説得力が~」⇔「目で見たものが全てだからね」、「永遠の処女」⇔「はじめが肝心なのよ」対になる概念を鮮やかに見せる会話が楽しい。もちろん「マリッジブルー」⇔「マタニティブルー」
・こういう胡散臭い男おるおるとしか言いようもない松田龍平、蒼井優のコンパチとして大活躍な黒木華(本作での役どころは本田翼っぽい)、
そしてなによりどこまで本当の事を言っているのかわからない可愛いとか可愛くないとも言えないそのまままの演技をする新垣結衣。
・職場での部署ごとの分断と右往左往する新垣結衣を見せつけることで移動の物語であることを告げる冒頭が見事。移動によって物語は展開し、手段がすべての要因となる。タクシーが渋滞したので走らなければならなくなり、飛行機によって連絡が取れなくなり、電車に飛び込もうとする。
・冒頭の鏡、土下座の影、ここぞというところでのドラマ的な音声では記されないワンショットはきわめて映画的。土下座のシークエンスは引きのショットもすごい。髪を撫でる気持ち悪さが電話のくだりにつながる。

・ネットワークビジネスについて最も蔓延ってるテレビ制作業界でそれをやれてしまうところに度肝抜かれたが、ほんとうにそれを言ってるのかどうかすら新垣結衣の張り付いた顔によって不明瞭になっている。ラストの松田龍平の「ここからはじまる恋があるかもしれない」が完全にクリシェとしか機能しない以上、ここもクリシェでしかない。もうトラウマとか言っていられない。それに自覚的な脚本。
・獣になれないことに自覚的=もう「シラけつつノる」ことのできない世代である私たちってのが本当に面白い。だから自分自身を消費社会の中で着飾るしかないのだけれどそれもなんの解決になっていないことがおそらく次回示されていく。
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