ジェームズガム

YOU -君がすべて- シーズン3のジェームズガムのレビュー・感想・評価

YOU -君がすべて- シーズン3(2021年製作のドラマ)
4.0
ネタバレあり












【雑感】

 最高の盛り上がりを見せた前シーズン。
 シーズン3はどういう見せ方をするのか興味を持ちながら鑑賞。
 なかなか楽しめた。


【ざっとしたストーリー】

 ラブと結ばれた主人公。アメリカの郊外に引っ越すが、隣人にいつもの衝動を発揮してしまう。ラブは感情的になり、隣人を殺害。二人でカウンセリングを受けることに。
 隣人の失踪がメディアに取り上げられる中、ラブが、赤ちゃんを危険にさらした男を襲う。男を監禁する二人。なんとか出してやろうと男の弱みを握ろうとするが何も出てこず。諦めかけていた頃、男の息子のやらかしを見つける。息子のレイプを妻がもみ消した件を告げると、男は落ち込み、最終的には自殺。二つの死体を同時に処理するため、男に、隣人殺害の濡れ衣を着せる計画を思いつく。実行して上手くいく。

 問題は解決したが、二人の夫婦仲は冷め切る。主人公は図書館に務める女性に執着。ラブは、隣人の息子と肉体関係を持つ(彼に死んだ弟を重ねていたのだろう)。二人はなんとか夫婦仲を改善するため、さまざまな方法を試す。そんな中、インフルエンサーの夫婦の前で喧嘩。正体を知られ、二人を監禁。またも厄介ごとを抱え込む。

 主人公は図書館勤めの女性と関係を持ち、その女性の元旦那を殺害。ラブと別れ、女性と添い遂げようと考える。一方その頃、隣人が自分達を監視していると知ったラブは、隣人の罪を暴露する。息子は、ラブが主人公からDVを受けているのではないかと思い、一緒に逃げようと誘う。息子は店に行き、閉じ込められているインフルエンサー夫婦を発見。助け出そうとしたところでラブに出会い、階段から突き落とされる。主人公がその処理をすることに。しかし、生きていることがわかる。息子を病院に連れていき、図書館の女性と街を出て行く決心をする。赤ん坊を迎えに行くと、ラブに連れ去られていた。ラブと離婚交渉を自宅で行うが、トリカブトの毒を盛られる。隣人さんが異変を察知してやってくる。しかし助けてくれず、「報いをうけろ」と息子のところに行く。監禁された状態で、お互いを罵り合うインフルエンサー夫婦の視点。二人はお互いの欠点を受け入れ、自分たちは最高の夫婦であると認め合う。そして、嫁の方が、主人公夫婦はお互いを信じあっていないので、お互いに鍵を隠し合っているのではないか、と推理して鍵を探す。(ここは主人公夫婦とインフルエンサー夫婦が、見事に対比されていて素晴らしいと思った)。

 主人公の家に図書館の女性がやってくる。ラブとの会話。ラブは彼女を殺そうとするが、子供を連れてきていたことを知り、思いとどまる。主人公を殺そうとしたところで、反撃に合うラブ。実は前もって、トリカブト対策をしていたのだ(食事にそもそも手をつけるな、とは思う笑)。ラブと家と自分の過去、すべてを燃やすことですべての未練を断ち切る主人公。自分は殺された、ということにしたのだ。自分と同じ道を歩ませるわけにはいかないと、赤ん坊を、ゲイのベビーシッターのところに預ける。主人公は、行方をくらませた図書館の女性を追い求め、世界中を飛びまわることになる。


【よかったところ】

▼コンセプトがはっきりしている。

 シーズン1には多くの欠点があった。そのうちの一つがコンセプトのずれだ。ストーカーのサイコが、一人のヒロインに執着して、ヒロインに手を出す周囲の連中を殺して回る、というのがコンセプトだったはずだ。しかし、後半になると、明らかにヒロインより子供のほうが大事な人に見えてしまうのだ。あれだけ人を殺したのに、お前がヒロインをあっさり殺すんかい、と、拍子抜けした人間は多いだろう。のちに、主人公の行動原理は明かにされるが、シーズン1時点では主人公のことを知らないので、結局なにがしたかったんだろう、と思ってしまう。

 シーズン3では、家族を手にした主人公の危機を描いていた。作中でゴーンガールの原作が登場していた。シーズン3は、「ゴーンガールのその後」をコンセプトに作られたのではないかと思う。その狙いは、なかなか面白いし結構高いレベルで達成できていたと思う。最後までブレを感じなかった。殺し、という極端な要素を省けば、今シーズンで描かれているのは、「冷え切った仮面夫婦の立ち直りと破綻」ということになるだろう。普遍性がある。コンセプトを守り抜きながら、要所要所にツイストを入れ、上手くまとめ切れていたと思う。


▼ラブの暴走

 隣人を殺害するところは予想の範囲内だったが、反ワクのおっさんをぶん殴って襲うところは、なかなか驚かされた。おっさんが言い訳を始めたあたりから、「やるぞ、ラブはやるぞ……」と思っていたが、実際におこなわれているのを見ると、なかなかにショッキング。彼は死んでいなかったので、事態は複雑化する。殺す、という安易な選択を、なかなか発動できず、窮地に追いやられるというのは、前シーズンと同じ手法だ。今回は、本当にただの善人で、口止めする方法がなさそうというのが厄介なところ。最終的に、息子の悪事を暴き、彼を自殺に追い込み、事なきを得たが。
 ラブという爆弾を抱えながら進行するので、ハラハラしながら観れた、というのはあるだろう。

▼二つの夫婦の対比

 インフルエンサー夫婦が登場する。僕含め、視聴者のほとんどが、「こいつら早く死なないかなぁ」というのが本音だったろう。実際、めちゃくちゃムカつくのだ。
 ラブの失言のせいで二人を閉じ込めることになった主人公達。彼らは常に喧嘩していて、やはりクソだな、と思っていたら、まさかの和解。主人公たちが、騙し合い、殺し合いをしている最中に、心温まるやり取りをする。対比としてわかりやすく、また、胸を打つものとなっていた。一番死んでほしいと思える二人を使い、一番エモーショナルな話を構築していた。ここに関しては実に見事だと思う。一番の名シーンになっていた。また、主人公たちがお互いを疑い合っているクソ夫婦だから、監禁場所の中に鍵を隠している可能性が高いと、推理する流れもいい。


【微妙なところ】

▼予想通りな部分も多い

 シーズン2は、後半の畳みかけが素晴らしく、そこで一気に評価を上げていた。
 シーズン3後半は、予想の範囲内のことしか起こらなかった印象もある。ラブという爆弾を生み出したのだから、もっともっと、大きな爆発を連発させてくれてもよかったんじゃないか、と物足りなさを覚えた。とはいえ、二つの夫婦を重ねて見せる手法など、巧い部分も多い。シーズン2後半と比べたら見劣りするが、十分、楽しめる作品になっていた。

 あと、シーズン2の女の子へ金を送る件、忘れずにやってほしいんだけど……。なかったことになってそうだなぁ。


【総評】

 善人を監禁、インフルエンサー夫婦の和解など、十分、観るに値する面白さはあったと思う。シーズン4にも期待したい。ちなみにシーズン4のパート1は既に観ているが……すでにコンセプトのブレを感じ始めている。さてどうなる。